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ここまで2連勝の藤井聡太挑戦者(19)高勝率の先手相掛かりで臨む 王将戦七番勝負第3局開始

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月29日。栃木県大田原市・ホテル花月において第71期ALSOK杯王将戦七番勝負第3局▲藤井聡太挑戦者(19歳)-△渡辺明王将(37歳)戦が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 対局室には藤井挑戦者が姿を見せます。席はあらかじめ決まっていて、藤井挑戦者は下座に着きました。

「大田原は那須与一ゆかりの地ということで、私はちょっと、弓矢を射つことはできないんですけど、扇の的を射るような与一の集中力を見習って、明日からの対局に臨みたいと思います」

 前夜祭で藤井挑戦者はそう語っていました。

 続いて渡辺王将入室。床の間を背にして上座に着きます。

「先週の第2局は内容も結果もあまりいいところがなかった」「もう頑張ってやっていくしかないかな、というような、そういった気持でおります」

 渡辺王将はそう語っていました。

 両対局者ともにマスク姿。日本将棋連盟はこれまでマスク着用を「推奨」としてきましたが、先日、それを義務化するという報道がありました。

 本局の立会人を務めるのは深浦康市九段。本棋戦では2008年度七番勝負に登場し、羽生善治王将(当時)に挑戦。3勝4敗で惜しくも王将位獲得はなりませんでした。

 藤井挑戦者はまず茶碗を口にし、お茶を飲みます。丁寧に手ぬぐいで手を拭き、飛車先の歩を手にし、一つ前に進めました。

 渡辺王将はしばし瞑目。そしてこちらも飛車先の歩を伸ばします。

 5手目の選択。藤井挑戦者は角の横に金を上がりました。藤井先手の第1局に引き続いて、戦型は相掛かりです。

 互いに飛車先の歩を交換しあったあとの24手目。渡辺王将は8筋中段の飛を7筋に寄せました。いわゆる「縦歩取り」のモーションです。これが用意の一手でしょうか。まずは渡辺王将の事前研究の深さが注目されるところです。

 ちょうど10時頃、藤井挑戦者は金を三段目に上がって、歩を支えました。対して渡辺王将はすぐに8筋に飛車を戻ります。藤井挑戦者が金を二段目に戻せば千日手模様。それは後手の渡辺王将が歓迎するところです。

 藤井挑戦者はすぐに指す気配はなさそう。2日制、持ち時間各8時間の対局は、まだ始まったばかりです。

 ・・・と書いたところで、藤井挑戦者は29手目を指しました。▲8六歩! 第1局でも話題を呼んだ符号でした。形は違えど、相掛かりで先手側からこの歩を突くのは目をひきます。本局もまた、新時代を感じさせる一局となるのでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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