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現役最年長の名棋士・桐山清澄九段(74)通算1000勝目前ながら今期竜王戦5組昇決で敗れると引退に

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 12月7日。大阪・関西将棋会館において第35期竜王戦5組ランキング戦1回戦▲桐山清澄九段(74歳)-△南芳一九段(58歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は22時7分に終局。結果は152手で南九段の勝ちとなりました。

 南九段は2回戦で星野良生五段と対戦します。

 敗れた桐山九段は昇級者決定戦に回り4組昇級を目指します。規定上、どこかで敗れ、4組昇級の可能性がなくなった時点で引退が決まります。

 桐山九段の通算成績は996勝956敗(勝率0.5102)となりました。

桐山九段、惜しくも勝機を逃す

 桐山九段は竜王戦で前々期、前期と、敗れれば引退という一番をしのいで現役続行を決めています。

 規定により、今期の現役続行の条件は厳しくなって、5組残留ではなく、4組昇級が求められています。

 桐山九段が今期ランキング戦1回戦で対戦するのは南九段です。両者は過去に1組に在籍し、1988年(第1期)には桐山九段、1998年(第11期)には南九段がそれぞれ優勝を飾っています。

 桐山九段はタイトル4期、A級14期。南九段はタイトル7期、A級9期。

 両者は棋聖戦五番勝負でも2度対戦するなど、どちらも長く関西を代表する名棋士として活躍してきました。

 今からちょうど四十年前の1981年12月8日には、竜王戦の前進である十段戦の予選で対戦しています。桐山八段はA級在籍中で34歳。南四段は新進気鋭の18歳でした。両者の現在の年齢はそれからちょうど40を足していることになります。

 両者の過去の対戦では相居飛車の戦型が多かったのですが、最近では南九段が飛車を振ることが多くなりました。

 本局、後手となった南九段は三間飛車に振りました。対して桐山九段は居飛車穴熊に組んでいます。

 本格的に駒がぶつかるまでに長い押し引きがあったあと、夕休前、銀冠に組んだ南九段の玉の近くで本格的な戦いが始まりました。

 桐山九段はうまい手順で大駒の飛角を急所に配して、一気に優位に立ちます。大きく優位に立って、勝利に近づいたかとも思われました。

 しかし若い頃から腰が重いことで知られる南九段。決め手を与えず押し戻します。形勢は揺れ動きながら、最終盤へと入りました。

 桐山九段は堅く遠い玉形をいかし、攻めていきます。しかし南九段の粘り強い受けにあって、次第に切れ筋に陥りました。

 最後は南九段が満を持して反撃。152手で桐山九段の投了となりました。

 昇級者決定戦に回ることになった桐山九段。ここから4組に昇級できなければ、引退が決まります。通算1000勝まではあと4勝。大きな目標を達成しながら、現役続行はなるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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