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われらの時代を代表する大天才・藤井聡太竜王(19)王将挑戦権を獲得し史上最年少五冠チャレンジへ

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月19日。東京・将棋会館において第71期ALSOK杯王将戦・挑戦者決定リーグ▲藤井聡太竜王(19歳)-△近藤誠也七段(25歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 10時に始まった対局は19時12分に終局。結果は91手で藤井竜王の勝ちとなりました。

 リーグ成績はこれで藤井竜王5勝0敗、近藤七段3勝2敗。藤井竜王は最終戦を待たずして渡辺明王将(37歳)への挑戦権を獲得を決めました。

 19歳での王将位挑戦は豊島将之六段(2011年当時20歳)を抜いて史上最年少記録です。

 将棋界八大タイトルのうち、竜王、王位、叡王、棋聖の四冠をあわせ持つ藤井竜王。これで五冠へのチャレンジとなります。

 19歳で五冠達成となれば、羽生善治五冠(1993年当時22歳)を抜いて、史上最年少記録です。

 藤井竜王の今年度成績は43勝7敗(勝率0.860)となりました。

 年間勝率としては史上最高ペースです。

 王将リーグ初参加の2019年度。藤井七段(当時17歳)は逆転負けで王将挑戦を逸しました。

 ちょうど2年経った本日。四冠となった藤井竜王は、見事に五冠挑戦を決めました。

王者・藤井竜王、盤石の勝利

 藤井竜王先手で戦型は相掛かり。早い段階で前例を離れ、両者の構想力が問われる進行となりました。

 大一番らしいというべきか、両者ともに慎重に時間を使い、スローペースで進んでいきます。

 57手目。藤井竜王は金取りに歩を打ちます。持ち時間4時間のうち、残りは藤井50分、近藤40分。

 近藤七段は打たれた歩を金で取るか、桂で取るか。悩ましいところで近藤七段は8分考え、金で応じます。この対応が疑問だったか、本局で初めて、コンピュータ将棋ソフトが示す評価値では、大きな差がつきました。

 近藤陣のスキが生じたところに藤井竜王は角を打ち込みます。ついに均衡が崩れ、形勢は藤井優勢へと推移していきました。

 2年前の広瀬章人竜王-藤井七段戦(肩書は当時)は、詰むや詰まざるやというきわどい最終盤で藤井七段が最後に受けを誤りました。しかし本局は万全の態勢で逆転の余地を与えません。

 91手目。藤井竜王はしっかりと、自陣に金を埋めて受けます。近藤七段は攻防ともに見込みなしと判断。ここで潔く投了しました。

 藤井竜王はまた先手番で盤石の勝利を収めました。今年度、先手番での成績は25勝1敗(勝率0.962)。直近1年間(2020年11月20日から現在まで)の先手番成績は33勝1敗(勝率0.971)となりました。

 藤井竜王と近藤七段の対戦成績は藤井5勝、近藤1勝となりました。

 若き両者の対戦は、これからも長きにわたって続いていくでしょう。12月2日にはB級1組順位戦で当たります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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