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若手実力者・近藤誠也七段(25)王将挑戦権争い、じわり浮上 強豪・広瀬章人八段(34)に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月2日。東京・将棋会館において第71期ALSOK杯王将戦・挑戦者決定リーグ▲広瀬章人八段(34歳)-△近藤誠也七段(25歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は19時5分に終局。結果は110手で近藤七段の勝ちとなりました。リーグ成績はこれで2勝1敗。タイトル初挑戦に向け、じわりと浮上しました。

 広瀬八段は1勝3敗。挑戦権獲得の可能性はなくなり、残り2戦、残留争いに向けての戦いとなりました。

近藤七段、入玉して勝利

 広瀬八段先手で、戦型は相矢倉。角交換から広瀬八段は角の打ち込みに強い片矢倉(天野矢倉)に組みました。

 広瀬八段が桂を跳ねて動いてきたのに応じ、近藤七段は守りの銀を積極的に前に押し上げ、攻撃の拠点とします。近藤七段にとっては、さほど自信が持てる進行ではなかったようですが、進んでみると次第に近藤七段の模様がよくなっていきました。

 広瀬八段は飛車を取らせる間に近藤陣に攻めかかりますが、近藤玉は上部が広い形。96手目、広瀬陣に入り込んで、入玉が確定しました。

 最後は近藤玉がまったく捕まらない形なのに対して、広瀬玉は受けても一手一手。110手で近藤七段の勝ちとなりました。

 今期7人のメンバーの中で、唯一タイトル戦登場経験のない近藤七段。しかしその実力を評価する声は高く、ダークホース的存在になる可能性がささやかれていました。初戦で羽生善治九段には敗れたものの、糸谷哲郎八段、広瀬八段と格上のA級棋士を連破して、じわりと挑戦権争いに浮上しました。

 ここからは順に永瀬拓矢王座、藤井聡太三冠、豊島将之竜王。タイトル保持者との3連戦で、相手がキツいのは言うまでもありませんが、そこを制すれば、所司和晴七段門下の偉大な兄弟子・渡辺明王将への挑戦権を獲得できる可能性も高いでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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