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藤井聡太叡王、カド番しのぐか? 伊藤匠七段、初のタイトル獲得か? 5月31日、叡王戦五番勝負第4局

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 5月31日。千葉県柏市・柏の葉カンファレンスセンターにおいて第9期叡王戦五番勝負第4局▲伊藤匠七段(21歳)-△藤井聡太叡王(21歳)戦がおこなわれます。棋譜は公式ページをご覧ください。

 五番勝負は、第1局は藤井叡王の勝ち。第2局、第3局は伊藤七段が勝っています。

 藤井叡王にとっては、本局はタイトル戦100局目。これまでの成績は79勝19敗1持将棋(勝率0.806)と圧倒的です。直近に防衛を果たした名人戦まで含め、これまで22回連続、一度も敗退することなく、タイトル戦を制してきました。しかしこの叡王戦では自身初めて、カド番に追い込まれています。またシリーズでの連敗も、初めてです。

 藤井叡王は本局で敗れると叡王位を失い、独占している八冠の一角が崩れることになります。

 伊藤七段はあと1勝で初タイトル獲得となります。もちろん先手番となる本局で決めたいところでしょう。

 もし本局で決めた場合には、伊藤七段は21歳7か月。タイトル獲得の年少記録としては、史上8位の若さとなります。

 ちなみに現時点で8位は、当時22歳の三浦弘行新棋聖。当時は七大タイトル制で、そのすべてを独占していたのが羽生善治七冠。三浦新棋聖の誕生は、タイトル独占を崩すものでもありました。

 藤井叡王の今年度成績は5勝3敗です。

 直近では名人戦七番勝負第5局で豊島将之九段に勝利。名人戦2連覇を達成したばかりです。

 名人防衛後の記者会見では、叡王戦に関する質問も多く聞かれました。

藤井「この2か月ぐらいはちょっと、ミスが少なからず出てしまっているかなという印象は持っていますけど。ただ、対局していろいろ、もちろん得たものもあると思っていますし。叡王戦が次、カド番という状況で迎えることになりますけど。臨む上での気持ちであったり、やるべきことというのは、いままでと変わらないかなというふうにも思っているので。対局、すぐにありますけど。それまでにしっかり準備をして、全力を尽くしたいと思っています」「あまり要因というのは、はっきりとはわからないですけど。少し読みの精度が下がってしまっているところがあって。それがミスにがってしまったというところがいくつかあったかなというふうには思っています。今回の名人戦をはじめ、これまで経験の少ない将棋になることが最近は多かったので、そういった局面における判断力というのが、やはりまだ十分ではないのかなというところも感じています」「叡王戦の第4局もすぐにありますし。大きな対局が今後も続くかなと思ってるので。そちらでもよい将棋が指せるように引き続きせいいっぱい、がんばっていきたいと思っています」

 伊藤匠七段の今年度成績は4勝3敗です。

 直近では竜王戦1組3位決定戦で久保利明九段に敗れています。昨年は竜王挑戦者だった伊藤七段。今期はここで敗退となりました。

 藤井竜王への挑戦権を争う決勝トーナメントは、出場の11棋士が出揃ったところです。

 藤井叡王と伊藤七段の過去の対戦成績は、藤井叡王が持将棋1をはさみながら11連勝。そのあとで伊藤七段が2連勝を返しています。

 藤井叡王がカド番をしのいで最終第5局に持ち込むのか。それとも伊藤七段奪取か。叡王戦第4局は、大注目の大一番です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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