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B級1組7回戦▲郷田真隆九段(3勝3敗)-△藤井聡太三冠(5勝1敗)戦開始 戦型は角換わり腰掛銀

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月19日10時。東京・将棋会館において第80期順位戦B級1組7回戦▲郷田真隆九段(50歳)-△藤井聡太三冠(19歳)戦が始まりました。

 本局がおこなわれるのは東京・将棋会館4階、高雄の間。隣りには棋峰の間、雲鶴の間と並んでいて、ふすまを取り払うと3室がつながった「大広間」と呼ばれる広い空間となります。本日は棋峰に2局、雲鶴に2局配され、大広間では合計5局がおこなわれます。

 先に入室したのは藤井三冠で、床の間を背にして上座に着きました。藤井三冠は鞄の中から「伊右衛門」を取り出して、紙コップに注ぎます。

 続いて郷田九段が入室。盤の前に座りました。

 駒を並べ終えたあと、奥の雲鶴の間からは、先後を決める振り駒の音が聞こえてきます。本局は順位戦で、組み合わせ抽選時に先後が決められています。

 定刻、午前10時。全5局それぞれ記録係が対局開始の合図をして、その声が大広間に響きました。

「それでは時間になりましたので、郷田先生の先手番でお願いします」

 藤井三冠と郷田九段は一礼。持ち時間6時間の対局が始まりました。

 順位戦ではB級2組以下とB級1組以上で、少しだけ時間の計測方式が違います。B級2組以下はチェスクロック方式。1秒単位で消費時間が計測されます。一方、B級1組以上は将棋界伝統のストップウォッチ方式。60秒未満は切り捨てで、その分、対局時間が長くなります。本局の隣り、棋峰の間ではC級1組の2局がおこなわれています。通例では本局の方が終局時間が遅くなることが予想されます。

 郷田九段は一呼吸をおいたあと、初手、飛車先の歩を突きました。記録上、消費時間は0分です。

 藤井三冠はいつもの通り、紙コップを口にしてお茶を飲みます。そして後手番ではいつもの通り、飛車先の歩を一つ前に進めました。こちらも記録上、消費時間は0分です。

 進んで戦型は角換わり腰掛銀となりました。

 両者の公式戦の対局は藤井1勝。他には今年のABEMAトーナメント(非公式戦)で対戦し、そちらも郷田九段先手で角換わり腰掛銀となりました。

 結果は熱戦の末に藤井現三冠が勝っています。

 本局、後手の藤井三冠は40手目、中段に桂を跳ね、先に動いていきました。郷田九段は銀取りをどう受けるか。上にあがるのか、下に引くのか。11時を過ぎ、さらに11時半を過ぎた現在、郷田九段はずっと考え続けています。

 本日、東京・将棋会館で最も格の高い特別対局室では、女流王将戦三番勝負第2局▲里見香奈挑戦者-△西山朋佳女流王将戦がおこなわれています。

 里見挑戦者が勝てば2連勝で奪取。西山女流王将が勝てば1勝1敗で追いつきます。

 西山挑戦者は先日、第1期白玲戦七番勝負を4連勝で制し、初代白玲の座に就きました。女流棋界は八大タイトル制となったばかりですが、里見女流四冠と西山女流四冠の「2強」が天下を二分する形。「女流四冠VS女流四冠」のタイトル戦は今回、当然ながら史上初となります。

 女流ではない一般タイトル戦では2013年、羽生善治棋聖(王位・王座)に渡辺明挑戦者(竜王・棋王・王将)がいどむ棋聖戦五番勝負が史上唯一「三冠VS三冠」でした。

 叡王戦が増えて八大タイトル制となった現在。もし今年度、藤井三冠(王位・叡王・棋聖)が竜王位を獲得し、さらに王将戦で渡辺明王将(名人・棋王)に挑めば、史上初の「四冠VS三冠」のタイトル戦となります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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