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豊島将之竜王(31)封じ手は飛車回り 藤井聡太挑戦者(19)熟慮に沈む 竜王戦第1局2日目開始

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月9日9時。東京都渋谷区・セルリアンタワー能楽堂において第34期竜王戦七番勝負第1局▲藤井聡太三冠(19歳)-△豊島将之竜王(31歳)戦、2日目の対局が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 8時44分頃、まず藤井挑戦者が姿を見せ、続いて49分頃、豊島竜王が現れます。

 本局の立会人は中村修九段。記録係は広森航汰三段。両者が初期位置に駒を並べ終えたあと、中村九段が声をかけます。

中村「それでは昨日の指し手を再現していただきます」

広森「先手、藤井三冠▲2六歩。後手、豊島竜王、△8四歩。・・・」

 広森三段の棋譜読み上げに従って、両者は先日の指し手を盤上で並べていきます。43手目、藤井挑戦者が▲6六金と上がった局面で、豊島竜王が44手目を封じました。

 中村修九段が2通の封筒にはさみを入れて開封。封じ手用紙に赤ペンで、矢印で示されている駒の動きを読み上げます。

中村「ええ、封じ手は△8四飛車です」

 その声に従って、豊島竜王は5四の飛車を、8四へと移動させました。

中村「それでは定刻となりましたので、再開してください」

 両対局者は改めて深く一礼。第1局2日目の戦いが始まりました。

 封じ手の局面は手が広く、有力な候補手がいくつも考えられるところ。折田翔吾四段は見事に予想を的中させていました。

 藤井挑戦者は豊島竜王の封じ手をどれぐらい想定していたのか。すぐに次の手は指さず、前傾姿勢で考えます。

 豊島竜王の飛車は元の8筋へと戻りました。8四は縦横によく利く理想的なポジションです。一方で藤井挑戦者の飛車は歩越しで3五の地点。せまく窮屈なポジションです。

 飛車のはたらきだけ見れば豊島竜王の側に分がありそうですが、藤井挑戦者は2歩得という実利を手にしています。形勢はほぼ互角。本格的に駒がぶつかるまで、まだまだ難しい駆け引きが続きそうです。

 藤井挑戦者の手は動かず、そのまま40分以上が過ぎました。

 竜王戦七番勝負開幕前までの両者の対戦成績は豊島竜王9勝、藤井挑戦者8勝。最初は豊島竜王6連勝でしたが、もし本局で藤井勝ちならば、ついに五分となります。

 本日は女流王将戦三番勝負第1局・西山朋佳女流王将-里見香奈挑戦者戦もおこなわれます。こちらは女流将棋界の頂上決戦です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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