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高く厚き壁・豊島将之叡王(31)逆転で藤井聡太挑戦者(19)を降しタイに戻す 叡王戦五番勝負第2局

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 8月3日。山梨県甲府市・常磐ホテルにおいて第6期叡王戦五番勝負第2局▲豊島将之叡王(31歳)-△藤井聡太二冠(19歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 9時に始まった対局は19時5分に終局。結果は161手、大逆転で豊島叡王の勝ちとなりました。

 五番勝負はこれで両者1勝ずつのタイ。

 第3局は8月9日、愛知県名古屋市・か茂免でおこなわれます。

 豊島叡王と藤井挑戦者の通算対戦成績は豊島8勝、藤井4勝となりました。

これが豊島叡王の底力

 豊島叡王先手で戦型は角換わり。両者ともに居玉のまま早繰り銀に出ました。

 32手目、藤井挑戦者は銀取りに4筋の歩を突きます。相手の早繰り銀にはたらきかける、用意の研究手と思われる一手でした。

 豊島叡王はいったん銀を三段目に引いたあと、相手が突き越した4筋の歩に向かって反発。藤井挑戦者も飛を回って、4筋が主戦場となりました。

 豊島挑戦者が藤井陣のスキに角を打ち込んだのに対して、藤井挑戦者は自陣中段に筋違い角を打ちます。

 互いの角が再び交換になったあと、手番を握った藤井挑戦者は、今度は豊島陣に角を打ち込みます。ここからは藤井二冠の攻めが急所をとらえ、次第にヒットしていきました。

 藤井優勢で迎えた終盤の91手目。豊島叡王は相手の歩頭に銀を打つ、渾身の鬼手を放ちます。これで追い上げ、最後までわからない最終盤を迎えました。

 持ち時間4時間を先に使い切ったのは藤井挑戦者。96手目から一分将棋となりました。普通ならあわてそうなところですが、藤井挑戦者の対局姿勢は変わりません。

 続いて97手目。豊島叡王も持ち時間を使い切り、両者秒読みに。きわどい手順を織り交ぜ、豊島叡王の攻めも相当な迫力です。

 藤井挑戦者が華麗な攻防の順を見せる一方、豊島玉は端1筋まで逃げ越して、そう簡単には詰まない形になりました。もう流れはどちらが勝っても不思議ではありません。

 116手目。藤井挑戦者は金を取ります。正確無比を誇る藤井挑戦者にして、ついに疑問手が出たか。この瞬間、ついにコンピュータ将棋ソフトが示す評価値は逆転しました。

 貴重な手番を得た豊島叡王。藤井玉に迫って大逆転。ついに評価値は豊島勝勢です。藤井玉を受けなしに追い込みました。

 藤井挑戦者は最後の死力をふりしぼり、おそるべき迫力で豊島玉に迫ります。134手目、中段から飛車を打って王手。豊島叡王が少しでも対応を誤ればあっという間に頓死します。そこを豊島叡王は正確にしのぎ続けました。

 藤井挑戦者は時折中空を見上げながら、王手をかけ続けます。盤面を見つめ続け、冷静沈着は豊島叡王。勝負の帰趨は両対局者にはわかっていたのでしょう。

 160手目。藤井挑戦者は香を走って王手をかけます。豊島叡王の応手を待つ間、左手で頬杖をつき、がっかりした仕草を見せました。

 161手目。豊島叡王はしっかり歩を打って合駒します。王手をかけられ続け、4度目の合駒でした。

 王手をし始めて三十手近く。観戦者の目にも豊島玉が詰まないことが明らかになったところで、藤井挑戦者は投了。大熱戦に終止符が打たれました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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