Yahoo!ニュース

佐藤康光九段(51)王座戦で恐るべき地力発揮! 羽生善治九段(50)本戦以上30年連続の記録途切れる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 第69期王座戦二次予選10組。そこには羽生善治九段(50)と佐藤康光九段(51)の名がありました。

 タイトル通算獲得数は、羽生九段は99期。佐藤九段は13期。両者ともに将棋界のレジェンドです。

 羽生九段は特に王座戦では無類の強さを発揮。1992年から2010年の間に、将棋史上最高のタイトル19連覇を達成しました。

 19連覇のあと、王座に復帰してさらに5連覇。1つのタイトル戦で通算24期も将棋界最高の記録です。

 佐藤九段は王座のタイトルはまだ手にしたことがありません。五番勝負には2002年、2005年、2006年の3度登場。しかし、いずれも3連敗で羽生王座に敗れています。

 平成のほとんどの間、王座戦五番勝負では羽生無双の時代が続きました。その羽生九段から2017年、王座のタイトルを奪ったのが中村太地現七段でした。

 以後、羽生九段は五番勝負の舞台には登場していません。

 今期二次予選。2月18日、羽生九段は佐々木勇気七段と対戦しました。後手番となった羽生九段が三間飛車→角交換→向かい飛車という趣向を見せたのに対し、佐々木七段は筋違い角を打って、桂得の成果を得ます。中盤では佐々木七段が優位を築きましたが、羽生九段が追い上げて終盤では勝敗不明。どちらが勝つのかきわどい攻防が続きましたが、最後に逃げ切ったのは佐々木七段でした。

 羽生九段は1990年から2020年まで、30年にわたってずっと本戦以上出場という、これもまた驚くような記録が継続中でした。しかし今期でそれも途切れることになりました。

 佐藤九段は3月4日、中村七段と対戦しました。定跡形を離れた相居飛車の戦い。序盤で佐藤九段が一歩損をしてやや苦しいようにも見えました。しかし先攻してからは佐藤九段が少しずつリードを広げ、最後は中村玉を即詰みに討ち取りました。

 二次予選決勝は3月26日。佐藤九段と佐々木七段が対戦しました。後手番となった佐藤九段はいわゆる「阪田流向かい飛車」から穴熊に組みます。そして思わぬところから動いてきました。

 佐々木七段は桂得を果たしてわるかろうはずがないように見えます。しかし佐藤九段はここから持ち前の怪力を発揮。気鋭の若手を相手に丸太を振り回すような指し回しで、いつしか優位に立ちました。

 最後は138手で佐藤九段の勝ち。投了図がそのまま、佐藤九段の底知れぬ地力を示しているようにも見えます。

 はからずも羽生九段の仇を取るような形で本戦進出を決めた佐藤九段。日本将棋連盟会長の重責をにない、激務をこなしての日々のさなか、盤上でも結果を残し続けています。

 佐藤九段は自分より年下の棋士を連破して、本戦も勝ち上がりました。そして7月19日、木村九段と挑戦者決定戦を戦います。

 今回、五番勝負で待っているのは、羽生九段ではありません。現代将棋界「4強」の一角を占める永瀬拓矢王座です。佐藤九段、15年ぶりの王座戦五番勝負登場はなるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

松本博文の最近の記事