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藤井王位に挑戦するのは誰か? 白組は羽生九段、渡辺九段、木村九段が優勝争う 5月14日、リーグ最終戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 5月14日。東京・将棋会館において、伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦・挑戦者決定リーグ最終5回戦がおこなわれます。

 白組の対戦カードは以下の通りです。(▲=先手、△=後手)

▲羽生善治九段(3勝1敗)-△飯島栄治八段(0勝4敗)東京

△渡辺 明九段(3勝1敗)-▲木村一基九段(3勝1敗)東京

▲森内俊之九段(2勝2敗)-△西川和宏六段(1勝3敗)大阪

 白組で優勝の可能性があるのは3勝1敗の羽生九段、渡辺九段、木村九段の3人です。

 一方、紅組では佐々木大地七段、斎藤慎太郎八段、藤本渚五段が、やはり3勝1敗で並んでいます。

 紅組、白組の優勝者が挑戦者決定戦に進み、藤井聡太王位への挑戦権を争います。

羽生九段(3勝1敗)-飯島八段(0勝4敗)

 羽生九段は勝てば4勝1敗、敗れれば3勝2敗。本局の勝敗によってプレーオフに進出できるかどうかが決まります。もし敗れても、すでに残留は決定しています。

 王位戦リーグの残留条件はやや複雑ですが、3勝2敗で3人が並んだ場合には「直接対決>前期成績(前期リーグ勝星>前期予選勝星)」という条件で上位が決まります。羽生九段は直接対決で渡辺九段、木村九段に勝っており、前期は紅組で4勝1敗で優勝しているため、上位2枠に入ることになります。

 王位18期を誇る羽生九段。1993年に初めて王位リーグに入って以来、一度も陥落なしの記録を更新しています。

 四十代にして初めてリーグ入りを果たした飯島八段。残念ながらここまで0勝4敗で、すでに陥落が決定しています。しかしこうした状況でも、全力で指すのが将棋界というところ。陥落が決まった側が挑戦を目指す側に勝った例は、数多くあります。

 両者の過去の対戦成績は羽生九段3勝、飯島八段2勝。直近では2020年の王座戦本戦トーナメントで飯島八段が勝っています。

 飯島八段は、ここで羽生九段に勝てば通算対戦成績で指し分けとなります。もちろん全力で対局に臨むことでしょう。

渡辺九段(3勝1敗)-木村九段(3勝1敗)

 本局の勝者は4勝1敗となり、プレーオフ以上確定。もし羽生九段が勝てば、羽生九段とプレーオフを戦います。羽生九段が敗れると、そのままリーグ優勝、挑戦者決定戦進出が決まります。

 数々のタイトル戦で活躍してきた渡辺九段ですが、王位はまだ獲得経験がなく、七番勝負に進出したこともありません。

 渡辺九段は、リーグ優勝、挑戦者決定戦進出は、2007年度と2012年度の2回。そのときは深浦康市現九段、藤井猛九段にそれぞれ敗れています。まずは久々の挑決進出となるでしょうか。

 木村九段は本棋戦における上位の常連。2019年にはついに七番勝負を制し、史上最年長46歳で初タイトルを獲得しました。

 渡辺九段、木村九段ともに将棋界屈指の人気者。応援する側にとってもまた、熱い一番となりそうです。

森内九段(2勝2敗)-西川六段(1勝3敗)

 残念ながらすでに陥落が決まっている両者。しかし森内九段は羽生九段に勝つなど、存在感を示しました。西川六段は紅組では唯一の振り飛車党。本局でも採用なるでしょうか。両者は過去に対戦がなく、本局が初手合となります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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