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藤井聡太王位(18)封じ手前に駆け引き 豊島将之挑戦者(31)ややリードか? 王位戦第1局1日目終了

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月29日。愛知県名古屋市・名古屋能楽堂においてお~いお茶杯王位戦第62期王位戦七番勝負第1局▲藤井聡太王位(18歳)-△豊島将之竜王(31歳)戦、1日目の対局がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 振り駒の結果、第1局は藤井王位先手と決まりました。戦型は相掛かり。互いに飛車を細かに動き合う、難しい序盤戦です。藤井王位が35手目を考慮中に12時30分、昼食休憩に入りました。

 13時30分。再開時刻を過ぎてもまだ豊島挑戦者は対局室に戻ってきません。藤井王位は相手がいない盤に向かって、35手目、4筋の歩を五段目に伸ばしました。

 15時。藤井王位は午後のおやつとして「ぴよりんアイス」を頼んでいました。

 おやつの時間のあと、藤井王位は3筋の歩を飛車で取って動きます。頼んだおやつはかわいいですが、指し手は激しい。

 対して豊島挑戦者は足の早い桂を2枚跳ね、反撃の姿勢を整えます。藤井王位は1筋、豊島挑戦者は9筋から互いに突っかけて取り込み、わが道をいく攻め合いとなりました。

 王位戦では18時の時点で手番の側が次の手を封じます。

 藤井王位は比較的穏やかに9筋に歩を受けておくか。あるいはこのまま封じるのか。ABEMA解説の中村修九段がそう解説していた17時41分。藤井王位の手が動きました。

中村「あーっ! ▲9八歩でもないし、封じ手でもないし(苦笑)。▲8七歩! いやあ、びっくりですね。びっくりですね、この駆け引きは。いやあ、ここで指すんだ・・・」

 豊島挑戦者は驚いていたのかどうか。仕草はいつも通り落ち着いていて、表情はほとんど変わらない。挑戦者の心のうちは、まったくわかりません。

 藤井王位が飛車取りに歩を打ったのに対して、豊島挑戦者の次の一手はおそらく、飛車を逃げながら横歩を取る△7六飛。筆者手元の将棋ソフト「水匠3」では、それで評価値にして500点ぐらい豊島挑戦者がリードのようです。

 18時。立会人の青野照市九段が声をかけます。

青野「封じ手の時刻となりました。豊島挑戦者の手番で封じ手ください」

豊島「封じます」

 豊島挑戦者がすぐに応じて、48手目を封じることになりました。

 昨年の七番勝負はチャリティ用に封じ手が3通作成されました。今年は通常通りの2通です。藤井王位がサインをしたあと、豊島挑戦者が青野九段に封筒を2通預け、1日目の対局が終わりました。

 明日2日目は朝9時に封じ手開封。対局再開となります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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