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将棋界の新時代を切り開く天才・藤井聡太二冠(18)叡王挑戦権を獲得し三冠チャレンジ決定!!!

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月26日。東京・シャトーアメーバにおいて第6期叡王戦挑戦者決定戦▲斎藤慎太郎八段(28歳)-△藤井聡太二冠(18歳)戦がおこなわれました。

 結果は114手で藤井二冠の勝ちとなりました。

 藤井二冠は豊島将之叡王(31歳)への挑戦権を獲得。五番勝負で対戦します。藤井王位に豊島叡王が挑む王位戦七番勝負と合わせ、これから激熱の「十二番勝負」が始まります

藤井時代、完全ONの幕開けか?

 斎藤八段先手で、戦型は角換わり腰掛銀となりました。互いに間合いをはかりながら自陣で駒を動かし合う、現代調の進行。斎藤八段は中住居でバランス重視、藤井二冠は金銀2枚の囲いに入城し堅さ重視の布陣となりました。

 53手目、斎藤八段は4筋から仕掛けていきます。そこで藤井二冠の手が止まり、そのまま昼食休憩に入りました。

 12時40分、対局再開。藤井二冠は飛車側に上った金を中央に寄せます。斎藤八段は飛車を2筋に回り、藤井玉に照準を合わせ、継ぎ歩で攻めていきました。対して藤井二冠は飛角の利きを4筋に集中させ、反撃に出ます。

 叡王戦本戦の持ち時間はチェスクロック使用の各3時間。これはタイトル戦の本戦においては、最も短い設定です。中盤で惜しみなく時間を使うスタイルの両者。本局では斎藤八段の時間消費が先行しました。

 人類トップクラス同士によるいかにも難しい戦いが続く中、コンピュータ将棋ソフトが示す評価値は揺れ動きます。

 斎藤八段がわずかにリードし、迎えた77手目。斎藤八段は攻めるか受けるかの選択を迫られます。残り14分のうちの8分を割き、斎藤八段は相手の桂で当たりになっている銀を自然に引きました。しかしこの手が疑問だったというのですから、将棋は難しすぎるゲームです。

「うわ! 銀引いた瞬間に逆転しましたよ! 将棋は残酷だなあ・・・」

 解説の中村修九段はそう語っていました。以後、藤井二冠は優位を手放さず、最後まで走り続けることになります。

 85手目。斎藤八段は持ち時間3時間を使い切って、あとは一手60秒未満で指す「一分将棋」。対して藤井二冠は16分を残しています。

 86手目、藤井二冠は2分を使って着手。当たりになっている飛車を逃げず、相手の銀を取ります。これがいつもながらに正確な判断でした。

 104手目から藤井二冠も一分将棋に。両者秒読みとなれば、波乱もありそうなところですが、藤井二冠は間違えません。

 114手目。藤井二冠は斎藤玉の逃げ道に銀を捨てます。これが美しい決め手。斎藤八段は次の手を指さず、美しい投了図を残して終局としました。

 タイトルホルダーになって依然勝率8割4分という、前代未聞の勢いで勝ち続ける藤井二冠。三冠チャレンジを決め、いよいよ本格的な藤井時代ONとなるのでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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