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新旧最年少棋聖対決! B級1組3回戦・藤井聡太二冠(18)-屋敷伸之九段(49)戦は相掛かりに

松本博文将棋ライター

 6月13日10時。東京・将棋会館において第80期B級1組順位戦3回戦▲屋敷伸之九段(49歳)-△藤井聡太二冠(18歳)戦が始まりました。

 両者の今期順位戦成績はともに1勝1敗です。

 藤井二冠は1回戦で三浦弘行九段に勝ち。2回戦では稲葉陽八段に敗れています。

 長く続いた藤井二冠の順位戦連勝記録は22で止められました。しかしそれでもここまでの順位戦成績は40勝2敗(勝率0.952)。依然、驚くようなハイアベレージです。

 B1の3回戦一斉対局は6月17日に予定されています。しかし藤井二冠は現在、棋聖戦五番勝負を戦っているため、日程の都合上、本局は前倒しでおこなわれることになりました。

 屋敷九段は1回戦で木村一基九段に勝ち。2回戦では三浦九段に敗れています。

 屋敷九段はかつて史上最年少18歳でタイトル棋聖位を獲得。藤井現二冠に更新されるまで、三十年にわたって燦然たる記録を保持してきました。

 筆者は少し前、屋敷九段にインタビュー。藤井二冠について尋ねました。もしお時間があれば、そちらの記事もご覧ください。

 屋敷九段はタイトル最年少防衛記録は依然保持。もし今期棋聖戦五番勝負で藤井二冠が第4局までに防衛を果たせばそちらの記録も更新されることになりますが、はたしてどうなるでしょうか。

 早熟の天才・屋敷九段も順位戦では苦闘の連続。A級昇級までには22期かかりました。。山崎隆之八段が23期でA級に昇級するまでは、屋敷九段が史上最長期間を経てA級に昇級した記録の持ち主でもありました。

 屋敷九段はA級には6期在籍しています。

 藤井二冠と屋敷九段が過去に2回対戦。結果はいずれも藤井二冠が勝っています。

 9時34分頃。屋敷九段が登場。下座に着きました。

 続いて9時36分頃、藤井棋聖が登場。

 9時40分頃、両者一礼。藤井棋聖が「王将」、屋敷九段が「玉将」を据え、両者ともに大橋流で駒を並べていきます。

 定刻10時。記録係が対局開始の声をかけます。

「それでは時間になりましたので、屋敷先生の先手番でお願いします」

 両対局者は「お願いします」と一礼。持ち時間6時間、長丁場の戦いが始まりました。

 屋敷九段は気息を整え、少し時間をかけてから初手、飛車の前の歩を一つ進めました。B級1組は60秒未満切り捨てのストップウォッチ形式のため、記録上の消費時間は0分です。

 藤井二冠はいつもどおり、まず紙コップを口にします。そしてまたいつも通りの王道スタイルで、2手目は飛車先の歩を突きました。

 戦型は相掛かりに進みます。先に飛車先の歩を交換したのは後手の藤井二冠。浮き飛車に引いたあと、18手目、8筋の飛車を7筋に寄せます。先手の7六歩をねらう「縦歩取り」というモーションです。すんなり歩を取ることができればもちろん得ですが、手堅く受けられてみると、歩越しの飛車が悪形になる場合もあります。

 19手目。屋敷九段は歩を守って、手堅く7七の地点に金を出ました。この戦型ではしばしば見られる応酬。ただしこれまでの常識では、一般的にこの地点に金に配置するのはよい形とはされず、いずれ形を直すことになるかもしれません。

 20手目。藤井二冠が5筋二段目にかまえる「中住居」(なかずまい)に構えています。バランスのよい構えですが、そう堅くはなりません。

 どんな手にも一長一短、メリットデメリットあり。そうした中で、両者は指し手を選択していきます。

 24手目。藤井二冠は7筋に寄った飛車を8筋に戻します。11時52分頃、屋敷九段は「休憩に入れてください」と記録係に声をかけ、早めに休憩に入りました。

 12時からは昼食、18時からは夕食で、それぞれ40分の休憩がはさまれます。決着がつくのは、通例では夜遅くです。

 6月末からは王位戦七番勝負も始まります。B1の4回戦は7月15日に予定されていますが、藤井二冠と久保利明九段の対局は7月6日に変更されることが発表されました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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