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アゲアゲ物語第2章、最高潮へ! 棋士編入試験合格者・折田翔吾四段(31)竜王戦6組優勝の快挙!

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 5月25日。東京・将棋会館において第34期竜王戦6組ランキング戦決勝▲折田翔吾四段(31歳)-△長谷部浩平四段(27歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は20時45分に終局。結果は77手で折田四段の勝ちとなりました。

 プロ編入試験に合格し、2020年に四段となった折田四段。プロとして竜王戦に参加した1期目で6組優勝を果たすという、大変な快挙を達成しました。

 折田四段は本戦で5組優勝の青嶋未来六段(26歳)と対戦します。

竜王戦ドリーマーのアゲアゲさん

 折田四段は準決勝で佐藤秀司八段を降し、決勝に進出しました。

 今期竜王戦6組は西山朋佳女流三冠と小山怜央アマの活躍が話題を呼びました。両者は準々決勝で対戦し、小山アマの勝ち。その小山アマを止めたのが、長谷部四段でした。

 両者は本局が公式戦初対戦。そして勝った方が6組初優勝です。

 この日、一番格の高い特別対局室ではマイナビ女子オープン五番勝負第4局・西山朋佳女王-伊藤沙恵女流三段戦がおこなわれていました。

 本局が配されたのは2番目に格の高い、高雄の間の窓側。王座戦本戦2回戦・渡辺明名人-石井健太郎六段戦は本局の隣りで、入口側です。竜王戦6組決勝ということで、本局は席次1位の渡辺名人(永世竜王資格者)の対局よりも上の席でした。

 棋士番号は、長谷部四段が313。折田四段が321。上座に着いたのは歳下ながら先にプロになった長谷部四段です。

 振り駒の結果、先手は折田四段。戦型は相掛かりに進みました。

 後手の長谷部四段は縦歩取りのモーションで1歩を得します。名人戦七番勝負などでも現れている、現代最先端の進行でした。

 名人戦では後手から仕掛けたところ、長谷部四段はじっと自陣を整備して待ちます。ならばと折田四段は自陣角を打ち、折田四段から攻める展開となりました。

 長谷部四段は千日手を含みとして受けますが、折田四段は回避して決戦。折田四段が攻めきるか、長谷部四段が受け切るか、ギリギリの展開になりました。

 折田四段は持ち駒にした飛車を中段に打って切り捨て、さらに自陣の飛車も切り捨てて猛攻。一気に終盤戦へと入ります。

 63手目。折田四段は角を打って長谷部玉に王手をかけました。ここは応手の難しいところ。残り39分の長谷部四段は4分考えて桂を跳ねて王手を防ぎました。この手がどうも敗着になったようです。

 残り1時間10分の折田四段。ノータイムで銀を打ち込んで、怒涛の寄せを始めます。折田四段は長谷部玉を正確に受けなしに追い込んで、勝勢を築きました。

 長谷部玉には最後、9手詰が生じています。折田四段の実力をもってすれば、瞬時に読み切れる順でしょう。しかし折田四段は王手を始める前に、5分の時間をかけました。着実に詰ませて、きれいに収束。折田四段が大一番をものにしました。

「アゲアゲさん」と呼ばれ、人気YouTuberだった折田さん。アマチュア時代には公式戦でプロを相手に多くの勝ち星をあげ、棋士編入試験受験の資格を得ています。

 社会的な注目を集めた五番勝負では若手棋士を連破。2020年2月、合格を果たしています。

「ストーリー性のあるような棋士になれたらなあ、とは思うんですけど。とりあえず今日でアゲアゲ物語第1章は終わりという感じで。今後も第2章、第3章と、ストーリー性のあるような人生にできたらなあ、と思います」

 棋士編入試験合格後、折田さんはそう語っていました。

 今回の竜王戦6組優勝はアゲアゲ物語第2章における一つの山場でしょう。

 永世竜王・羽生善治九段、藤井聡太二冠らと折田四段の名が一緒に並んだ本戦トーナメント表ができあがっただけで、すでに「竜王戦ドリーム」という感があります。

 アゲアゲさんの快進撃はどこまで続くでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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