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藤井荘対局開始! 5月19日・20日、名人戦七番勝負第4局▲渡辺明名人-△斎藤慎太郎八段

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

「定刻になりましたので、渡辺名人の先手番で始めてください」

 5月19日9時。長野県高山村「緑霞山宿 藤井荘」において第79期名人戦七番勝負第4局▲渡辺明名人(37歳)-△斎藤慎太郎八段(28歳)戦が始まりました。

 立会人の青野照市九段が定刻9時になったことを告げ、両対局者は一礼。

 渡辺名人は初手、角筋を開きました。名人先手の第2局では、初手は飛車先の歩を突いて戦型は相掛かりでした。本局は矢倉模様の立ち上がり。今期名人戦ここまで4局のうち、3局は矢倉になったわけです。

「矢倉を制する者は棋界を制す」

 過去にはそんな言葉もよく聞かれました。名人戦七番勝負の舞台で数多く指されてきた戦型であり、渡辺名人、斎藤八段ともに得意としています。

 七番勝負はここまでは斎藤八段が1勝をあげたあと、渡辺名人が2勝を返しました。

「七番勝負は偶数局が重要」

 とはしばしば言われてきた言葉です。どの一局も重要なのは言うまでもありませんが、第4局でタイになるか、それとも二番差がつくかでは大きく違います。どちらのファンにとっても、ここは応援のしどころでしょう。

 渡辺名人は今年度、斎藤八段に負けたのが唯一の一敗で、そこからは6連勝。いよいよエンジン全開といった感があります。

 6月からは棋聖戦五番勝負も開幕します。

 名人防衛で三冠堅持。棋聖獲得で四冠。叡王、王座にも挑戦&獲得で五冠、六冠・・・。渡辺ファンはそういう夢を抱いていることでしょう。

 斎藤八段は今年度7勝2敗。要するにこちらも渡辺名人にしか負けていません。

 渡辺名人、斎藤八段ともに叡王戦で勝ち上がり、こちらでも当たることになりました。

 対局場は「緑霞山宿 藤井荘」。対局場の外からは、のどかに鳥が鳴く声が聞こえてきます。

 宿の名からはやはり、あの棋士が連想されます。

 12手目。斎藤八段は急戦含みに6筋の歩を突きます。ここまで先日おこなわれた▲行方尚史九段-△藤井聡太二冠戦と同じ進行です。

 13手目。渡辺名人は飛車そばの銀を上がります。行方-藤井戦とは違う進行となりましたが、こちらもまだ前例があります。

 時刻は10時を過ぎました。現在は21手目、渡辺名人が矢倉城に寄せて、玉を左に一つ寄ったところまで進んでいます。

 名人戦七番勝負は2日制。持ち時間は現在の将棋界で最も長い9時間です。決着は明日20日の夕方から夜になると予想されます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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