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行方尚史九段(47)叡王戦九段予選通過! 谷川浩司九段(59)佐藤康光九段(51)を連破

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月27日。第6期叡王戦段位別予選・九段戦Aの対局がおこなわれました。

 その結果、行方尚史九段(47歳)が準決勝で谷川浩司九段(59歳)、決勝で佐藤康光九段(51歳)を連破。予選突破を決めました。

 行方九段は本戦1回戦で藤井聡太二冠(18歳)と対戦します。

行方九段、最後の本戦出場枠を勝ち取る

 14時、準決勝▲行方九段-△谷川九段戦開始。

 行方九段先手で、戦型は相掛かりとなりました。互いに飛車先の歩を交換し合ったあと、行方九段は相手の飛車先、および自身の弱点である8筋角頭になかなか歩を打ちません。28手目、谷川九段がそこに歩を垂らしたタイミングで行方九段も動き、戦いが始まりました。

 谷川九段が少し無理気味に攻めていくのに対して、行方九段はしっかり受けます。さすがの谷川九段も手を作ることができず、中盤で差がつきました。

 16時11分、谷川九段は投了。69手と比較的短手数での終局です。

 行方九段から見て、これで谷川九段との対戦成績は9勝8敗(直近6連勝)となりました。

 19時、決勝▲佐藤康光九段-△行方九段戦開始。

 佐藤九段は序盤5手目で四段目に角を上がる独創的な序盤戦術を見せました。そこから向かい飛車にして桂を跳ねられるのがこの形のメリットです。2018年から佐藤九段がしばしば採用している雄大な構想なのですが、あまりに独創的すぎるのか、真似する棋士はほとんどいません。

 佐藤九段が銀冠に組んだのに対して、行方九段は地下鉄飛車で佐藤玉に照準を合わせます。この作戦が秀逸だったか、形勢は行方九段優勢で推移していきました。

 苦しくなった佐藤九段。しかしそこから腕力で持ちこたえます。互いに「ひえー」とつぶやき合う終盤戦は、行方九段が一手でも間違えれば逆転しそうな雰囲気に見えました。

 秒読みの声がずっと響く中、行方九段はリードを守りきり、最後は押し切りました。22時9分、128手で佐藤九段は投了しました。

 行方九段から見て、これで佐藤九段との対戦成績は16勝11敗(直近6連勝)です。

 行方九段は将棋界のレジェンド2人を連破して、九段予選突破決定。最後の本戦出場枠を勝ち取りました。

 本戦初戦の藤井聡太二冠戦は、大変注目される戦いとなるでしょう。過去の対戦成績は藤井二冠の2連勝です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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