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相掛かりの難解な戦い始まり、渡辺明名人(37)が51手目を封じる 名人戦七番勝負第2局1日目

松本博文将棋ライター
遠賀川河川敷の菜の花と筑豊富士(ボタ山) 福岡県飯塚市(写真:w.mart1964/イメージマート)

 4月27日。福岡県飯塚市・麻生大浦荘において第79期名人戦七番勝負第2局▲渡辺明名人(37歳)-△斎藤慎太郎八段(28歳)戦、1日目の対局がおこなわれました。

 渡辺名人先手で互いに飛車先の歩を伸ばし合って、戦型は相掛かりです。

 斎藤八段は「縦歩取り」のモーションで7筋の歩を取りました。そして34手目を指す前に長考します。斎藤八段は次の手を指さず、そのまま昼食休憩に入りました。

 再開後、斎藤八段は端9筋の歩を突っかけ、仕掛けていきました。これは予想手の一つです。

 渡辺名人は五段目に飛車を浮きます。「高飛車」(たかびしゃ)とも呼ばれるポジション。右→左→中央と、飛車が中段で大きく動きました。

 互いに飛車が元いた場所からは離れたため、そこに角打ちのスキが生じています。

 互いに相手陣に角を打ち合い、渡辺名人は9筋、斎藤八段は1筋の香を取ります。盤面全体で戦いが起こり、難解な中盤となりました。

 50手目。斎藤八段は飛車取りに馬(成角)を引きます。持ち時間9時間のうち、残りは渡辺7時間17分、斎藤4時間15分と、実に3時間もの差がつきました。

 51手目を前にして、渡辺名人の手が止まります。難しい局面でもありますし、またそのまま封じ手をするつもりでもあったのでしょう。

 18時30分。立会人の塚田泰明九段が声をかけます。

塚田「はい、封じ手時刻となりました」

渡辺「封じます」

 渡辺名人は1時間34分を使って次の手を指さず、封じ手としました。

 斎藤八段は前局第1局、封筒に赤ペンでサインをしたあと、次の動作にとまどう場面が見られました。本局ではもう、とどこおりありません。

 立会人が対局者から封じ手を預かる瞬間は、報道する側にとっては重要な撮影ポイントです。将棋界ではその際、立会人は盤側の机の反対側に移動することもあります。また机の前に座ったまま、という場合もあります。本局は後者のパターンでした。

 渡辺名人が2通の封筒を塚田九段に預け、1日目終了。形勢はほぼ互角です。

 明日2日目は朝9時に封じ手が開封されたあと、対局が再開されます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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