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名人戦七番勝負第2局▲渡辺明名人(37)-△斎藤慎太郎八段(28)戦開始 戦型は相掛かり

松本博文将棋ライター

 4月27日9時。福岡県飯塚市・麻生大浦荘において第79期名人戦七番勝負第2局▲渡辺明名人(37歳)-△斎藤慎太郎八段(28歳)戦が始まりました。

「はい、定刻になりました。渡辺名人の先手番でお願いします」

 立会人・塚田泰明九段の声をかけ、両対局者は「お願いします」と一礼しました。

 渡辺名人は襟元を正し、しばし瞑想。2筋、飛車先の歩を手にして一つ前に進めました。

 斎藤慎太郎八段も同様に飛車先、8筋の歩を進めます。

 奈良県出身の斎藤八段。手元には鹿がデザインされたマスクケースが置かれています。

 戦型は相掛かりへと進みました。両対局者ともに飛車先の歩を交換し、浮き飛車に構えます。

 25手目、渡辺名人は角筋を開きました。

 10時半過ぎ。斎藤八段が記録係にたずねます。

斎藤「この手は何分ですか?」

記録「12分です」

 ほどなく26手目、斎藤八段は飛車を8筋から7筋へと寄せました。いわゆる「縦歩取り」というモーションです。歩を実際に取れるのかどうかは展開次第ですが、本局では斎藤八段は歩を取ることができました。歩得の実利はもちろん大きい。しかしその損得は微妙です。

 11時を過ぎた現在は、斎藤八段が34手目を考えています。

 名人戦は9時間の長丁場。決着がつくのは、通例では明日2日目の夜です。

 ちなみに『将棋の渡辺くん』によれば、渡辺名人は2日目夕方、30分の休憩はいらないと思っているそうです。

 また、渡辺名人がお寿司を「さび抜き」で注文するのはよく知られた話ですが、2日目夕方休憩時に出されるサンドイッチに、辛子が入っているのも苦手だそうです。

 渡辺名人の今年度成績は1勝1敗です。

 本局が終わった翌日は移動日。その翌日には棋聖戦挑戦者決定戦という大きな一番を控えています。

 斎藤八段の今年度成績は5勝0敗。

 昨年度末、棋聖戦本戦1回戦で渡辺名人に敗れたあと、年度が変わってからは勝ち続け、現在5連勝中です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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