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鬼軍曹・永瀬拓矢王座(28)棋聖戦ベスト4進出! 藤井聡太棋聖(18)への挑戦権獲得まであと2勝

松本博文将棋ライター

 4月7日。東京・将棋会館において第92期ヒューリック杯棋聖戦準々決勝▲菅井竜也八段(28歳)-△永瀬拓矢王座(28歳)戦がおこなわれました。

 両者は同じ1992年生まれ。永瀬王座は神奈川、菅井八段は岡山出身で、ともに小学生の頃から将来を嘱望されていました。

 棋士になってからの両者の対戦成績はここまで永瀬5勝、菅井2勝。来期順位戦はともにA級所属で、今後はさらに対戦の機会も増えてくることでしょう。

 10時、菅井八段先手で対局開始。菅井八段が趣向をこらし、永瀬王座に馬(成角)を作らせる作戦を取りました。一般的に角の価値は「成角、持ち角、自陣角」の順に高いとされています。馬を作らせる側は手得などで代償を求めることになります。

 菅井八段は堅陣の穴熊、永瀬王座はバランス重視の右玉に組みました。

 中盤、菅井八段は自陣の堅さを頼みに飛車と馬を刺し違え、積極的に攻めていきます。対して永瀬王座は冷静に対応して反撃。穴熊を上部から攻めて優位に立ちました。

 苦しくなった菅井八段は終盤、手段を尽くして粘ります。永瀬王座は残り時間が切迫。いつしか形勢は逆転模様となりました。

 120手目。菅井八段は攻めか受けかの選択を迫られます。持ち時間4時間のうち、残りは菅井36分、永瀬2分。

 菅井八段は9分考えて自陣に銀を打ち、受けに回りました。しかしそれが疑問だったか。永瀬王座に攻めを続けられると、一手届かなくなりました。代わりに金を取って攻めていれば、逆に菅井八段の一手勝ちが望めたところだったようです。

 危地を脱した永瀬王座。一分将棋となりながらも誤らず、19時26分、126手で勝利を収めました。

 永瀬王座はこれでベスト4に進出。あと2勝で藤井聡太棋聖への挑戦権を得られるところまで勝ち上がりました。準決勝では中村太地七段と対戦します。

 永瀬王座は2016年、棋聖戦五番勝負で羽生善治棋聖(当時)に2勝3敗で惜敗しています。

 また昨年2020年は、挑戦者決定戦で大熱戦の末に藤井聡太七段(当時)に敗れました。今期五番勝負をリベンジマッチとできるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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