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アゲアゲ物語第2章進行中! 棋士生活2年目開始の折田翔吾四段(31)竜王戦6組で決勝進出

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月6日。東京・将棋会館において第34期竜王戦6組ランキング戦準決勝▲折田翔吾四段(31歳)-△佐藤秀司八段(53歳)戦がおこなわれました。

 ベテランの佐藤八段は過去に竜王戦は3組、順位戦はB級2組まで進んでいます。2011年度には4組で優勝し、本戦進出を果たしました。

 折田四段(愛称:アゲアゲさん)は昨年2020年、棋士編入試験に合格しました。

 折田四段は竜王戦は今期初参加ながら、4連勝でここまで勝ち上がってきました。

 本局。折田四段先手で、10時に対局が開始されました。後手の佐藤八段は一手損角換わりの作戦を選んだのに対して、折田四段は早繰り銀に出ます。

 折田四段が先攻し、佐藤八段が受けながら反撃をねらうという中盤戦。難しい形勢が続いたものの、次第に折田四段がリードしていきました。

 終盤では折田四段が一手の差をいかして相手玉を正確に寄せ切り、22時15分、109手で勝利を収めました。

 折田四段はこれで6組決勝に進出。参加1期目にして5組昇級を決めました。また優勝を果たせば本戦出場も決まります。

折田「ストーリー性のあるような棋士になれたらなあ、とは思うんですけど。とりあえず今日でアゲアゲ物語第1章は終わりという感じで。今後も第2章、第3章と、ストーリー性のあるような人生にできたらなあ、と思います」

 棋士編入試験合格後、折田四段はそう語っていました。アゲアゲ物語第2章は現在進行中です。そのクライマックスは、どのようなものとなるのでしょうか。

 準決勝のもう一つの山は、長谷部浩平四段と小山怜央アマが勝ち進んでいます。どちらも強敵なのは言うまでもありません。

 折田四段はアマチュア時代、小山アマに分がわるかったそうです。

 小山アマは竜王戦6組でもし決勝に進めばアマチュア史上初の快挙です。さらに優勝すれば規定により、棋士編入試験受験の資格が与えられます。

 もし小山アマが決勝に勝ち上がって折田四段と対戦となれば、ストーリー性は過剰なまでに高まるでしょう。

 折田四段は現在、順位戦の枠組の中ではフリークラスに所属しています。「いいところどりで、30局以上の勝率が6割5分以上」(たとえば20勝10敗)など、規定の成績をあげればC級2組へと昇級できます。

 棋士生活1年目の2020年度、折田四段の成績は12勝9敗という成績でした。2021年度は幸先よい1勝をあげ、これで通算13勝9敗です。

 もし10年ほどフリークラスに留まり続ければ、規定により引退に追い込まれます。

 奨励会から次点2回でフリークラスに入った棋士は過去全員、昇級しています。また編入試験合格組の先輩、瀬川晶司六段と今泉健司五段もC級2組昇級を果たしています。折田四段も続くことはできるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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