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フリースタイル山崎隆之八段(40)会心の指し回しで豊島将之竜王(30)に勝利 棋聖戦ベスト4進出

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月2日。第92期ヒューリック杯棋聖戦準々決勝の2局がおこなわれました。結果は以下の通りです。

山崎隆之八段○-●豊島将之竜王

中村太地七段○-●佐藤天彦九段

 ▲山崎隆之八段(40歳)-△豊島将之竜王(30歳)戦は大阪・関西将棋会館にておこなわれました。

 将棋の初手はまず、どこかの筋を突くのがほとんどです。しかし山崎八段は新年度最初の一手、角の横に金を上がりました。観戦者から喝采が起こりそうな立ち上がり。力戦派・山崎八段の面目躍如といったところでしょう。

 初手金上がりには振り飛車も考えられますが、居飛車党の豊島竜王は飛車先の歩を突いてわが道をいきます。

 山崎八段は雁木、豊島竜王は矢倉に組みます。山崎八段が右玉にスイッチしたのを見て、豊島八段は角切りから猛攻を開始します。形勢は豊島竜王がリードを奪ったかにも見えました。

 山崎八段は玉を盤上中段の四段目を経由して玉を逃げていきます。山崎八段らしい力強い指し回しが続き、形勢はいつしか山崎よしへと推移していきました。

 堅く見えた豊島玉は受けが困難となる一方、裸の山崎玉は盤上を右から左へと足早に逃げていき、つかまりません。

 優位に立ってからの山崎八段の指し回しは正確そのもの。19時50分、129手で山崎八段の勝ちとなりました。

 Twitterで「いきなり重いわ!」とつぶやいていた山崎八段。重い相手に会心の勝利を収め、ベスト4へと進出しました。次戦の相手は渡辺明名人。言うまでもなく、こちらもまた重い相手です。現タイトルホルダーをなぎ倒し、棋聖挑戦権をつかむことができるでしょうか。

 過去の対戦成績からすれば、藤井聡太棋聖の最難敵である豊島竜王は、今期敗退となりました。

 東京・将棋会館でおこなわれ▲中村太地七段(32歳)-△佐藤天彦九段(33歳)戦は161手の大熱戦の末、中村七段の勝ちとなりました。

 準々決勝最後の一局、永瀬拓矢王座(28歳)-菅井竜也八段(28歳)戦は4月7日、東京・将棋会館でおこなわれます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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