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永世竜王・羽生善治九段(50)あきらめず鬼辛抱を実らせ大逆転勝利! 竜王戦本戦出場まであと1勝!

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月1日。東京・将棋会館において第34期竜王戦1組出場者決定戦・羽生善治九段(50歳)-丸山忠久九段(50歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は22時52分に終局。結果は153手で羽生九段の勝ちとなりました。

 羽生九段はあと1勝で、本戦に出場できる1組4位が決定します。

 35年度連続で勝ち越しを続けている羽生九段。2021年度最初の一局も幸先よく制し、通算1482勝としました。

将棋はあきらめてはいけない

 振り駒で後手となった丸山九段。十八番の一手損角換わりを採用しました。

 羽生九段は玉を囲ってから棒銀に出ます。対して丸山九段は居玉のまま待ち、カウンターをねらいました。

 羽生九段の攻めを押さえ込み、中盤で優位に立ったのは丸山九段でした。

羽生「中盤で苦しくなってしまったんで、あとはずっと粘っているような感じでやっていました」

丸山「途中はよさそうだと思ったんですけど・・・」

 羽生九段は駒損の上に玉形もよくない。さすがに粘るのも難しいのではないか。そう思われたところから、羽生九段は驚異的な辛抱を続けます。

 101手目。羽生九段は守りの金を端9筋に出ました。いかにも非常手段と思わせる、あまり見たことのないような筋です。

羽生「全然自信なかったですけど、壁を解消しないことにはどうにもならないと思ったんで。勝負手気味の手ですね」

 丸山九段は明快な決め手を得られないまま、次第に時間が切迫していきます。

 122手目。丸山九段は最後の1分を使い、自陣の飛金両取りを受けず、相手陣に角を打ち込みます。部分的には厳しい攻め筋。しかしこの手が敗着となりました。

 丸山九段は羽生玉の上部に馬(成角)を作ることができます。しかしその後、127手目の飛車打ちをうっかり。三段目に逃げ出した自玉の位置がわるく、王手馬取りがかかってしまいます。

羽生「7六の馬が抜ける形になってよくなったんじゃないかと思ったんですけど・・・」

丸山「ちょっと、そこからはダメですね」

 羽生九段の鬼辛抱が功を奏して、ついに大逆転へと至りました。

「最後まで読み切れてなかった」という羽生九段。しかし勝勢となってからは誤らず、着実にゴールに向かいます。

 丸山九段が龍(成飛車)で王手をしたのに対して153手目、羽生九段はしっかり歩の合駒を打ちます。これで羽生玉は詰みません。丸山九段が投了し、大熱戦にピリオドが打たれました。

 将棋はあきらめてはいけない。その姿勢を改めて将棋界のレジェンドから見せられたような一局でした。

 羽生九段は次戦、1組4位、本戦進出をかけて、木村一基九段-阿部健治郎七段戦の勝者と対戦します。

羽生「しっかり準備してのぞめたらいいなと思います」

 1組ランキング戦はこれから準決勝の2局がおこなわれます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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