Yahoo!ニュース

充実・山崎隆之八段(40)熱闘161手で永世棋聖・佐藤康光九段(51)を降し棋聖戦ベスト8進出

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月16日。東京・将棋会館において第92期ヒューリック杯棋聖戦・本戦トーナメント1回戦▲山崎隆之八段(40歳)-△佐藤康光九段(51歳)戦がおこなわれました。

 本棋戦、山崎八段は昨年度ベスト4に進出しています。

 山崎八段は順位戦でA級昇級を決めたばかり。同じくA級に昇級した永瀬拓矢王座も含め、棋聖戦本戦でもやはり、A級棋士がずらりと名を連ねている印象があります。

 来期A級でタイトル獲得経験がないのは山崎八段だけです。四十代で初めてタイトル獲得となれば、46歳で王位を獲得した木村一基九段に続いて史上2人目となります。

 佐藤康光九段は来期でA級25期目。タイトル獲得は通算13期の超一流棋士です。棋聖位は通算6期獲得し、永世棋聖の資格を保持しています。

 佐藤九段は今期、二次予選を勝ち抜いて本戦進出。健在ぶりをアピールしました。

 棋聖通算16期のレジェンド羽生善治九段は今期、二次予選で敗退しています。その相手は森内俊之九段でした。

 森内九段は本戦1回戦で菅井竜也八段に敗れています。

 本局は振り駒で山崎八段先手と決まり、10時、対局が開始されました。

 腕力自慢で力戦どんとこい、という両者の対戦。戦型はオーソドックスでクラシカルな相掛かりとなりました。山崎八段が横歩を取って、局面は動いていきます。

 中盤、山崎八段は先に桂損します。対して佐藤九段は歩頭に桂を捨て、さらにはただで取られるところに金を打つ華やかな順で攻めていきました。盤面1筋から9筋まで、盤面いっぱいで戦いがおこなわれる大熱戦となります。 

 終盤、左辺にいた山崎八段の玉は、相手の攻め駒に追われながら右辺に逃げていきます。佐藤九段からの追撃をしのぎきった山崎八段。最後は佐藤陣に飛車を成り込んで勝ちを決めました。

 終局時刻は20時1分。総手数161手の熱戦でした。

 山崎八段はベスト8に進出。隣りで勝ち上がっているのは豊島将之竜王です。

 藤井聡太棋聖の生涯通算成績212勝40敗(勝率0.841)。負けたのはわずかに40回だけです。

 そうした中で、豊島竜王は藤井棋聖に大きく勝ち越しています。山崎八段は藤井棋聖と1回戦って負けなしです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

松本博文の最近の記事