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異次元・藤井聡太二冠(18)元竜王・広瀬章人八段(34)に完勝で今年度最高15連勝&竜王R戦22連勝

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 2月18日。大阪・関西将棋会館において竜王戦2組2回戦▲藤井聡太二冠(18歳)-△広瀬章人八段(34歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は21時43分に終局。結果は103手で藤井二冠の勝ちとなりました。

 藤井二冠はこれでベスト4に進出。準決勝では松尾歩八段と対戦します。

 藤井二冠はあと1勝で5期連続の本戦進出、あと2勝で5期連続のランキング戦優勝が決まります。

 また藤井二冠は竜王ランキング戦において、デビュー以来負けなしの22連勝を達成しました。

 また藤井二冠は今年度42勝8敗(勝率0.840)で勝数、勝率ともに1位をキープ。

 さらには今年度全棋士中最高の15連勝を達成しました。

藤井二冠、元竜王を相手に完璧な勝利

 戦型は相掛かり。藤井二冠はこの戦型、後手番で受けて立つのは多いところですが、先手番では大変に珍しい選択でした。

 28手目。広瀬八段は角を交換します。それから駒組合戦となりました。

藤井「序盤から構想が難しい将棋だった」

 と藤井二冠は局後に振り返っています。

 42手目。広瀬八段は自陣に角を据えます。この角がはたらくかどうかが勝負ですが、藤井二冠はそのはたらきを封じました。

 藤井二冠は特に変わった手を指したわけではありません。しかし自然な手の組み合わせで巧みに作戦勝ちし、優位に立ちました。

広瀬「ちょっと駒組が、甘いというかまずくて。かなり神経を使う展開になってしまった上に、ちょっと模様をだいぶわるくしてしまったので」

 夕食休憩後の45手目、藤井二冠は歩を取りながら中段に桂を跳ね出していきます。藤井二冠リードで夜戦が始まりました。

 広瀬八段もそうわるい手を指したようには見えません。しかし差は広がっていきます。広瀬八段はときおり、がっかりしたような表情を見せました。

広瀬「途中からは指してるだけに近い。残念な内容の将棋でした」

藤井「中央が手厚い形になったので、あのあたりで少し指しやすくなったのかな、と感じました」

 藤井二冠は暑さを感じるのか、セーターを脱ぎ、ワイシャツ姿となります。一方の広瀬八段はスーツのジャケットを着たままです。

 広瀬八段は飛角の大駒をじっと撤退して辛抱を続けます。74手目、広瀬八段が角を引いたところで持ち時間5時間のうち、残りは藤井26分、広瀬1時間15分。藤井二冠は時間が切迫しています。しかしそうした場面でも誤らないのが藤井二冠の恐るべきところです。

 藤井二冠は2枚の桂を連打して攻め続けました。さらには自陣の金を相手陣にまで進め、攻めに手厚さを加えます。形勢は藤井二冠勝勢となりました。

藤井「少し指せるかなと思ったんですが、そのあとで具体的にというのは難しくて。(勝ちになったと思ったのは)最後、▲4三歩から清算して▲4四銀と打ったあたりです」

 元竜王にして、現在は名人挑戦をうかがう広瀬八段を相手に、非の打ちどころのない指し回し。こうなっては、誰が勝てるというのでしょうか。

森内「藤井さん、今日も強かったですね」

 ABEMA解説の森内俊之九段はそう振り返りました。本局をまとめるとすれば、その一言に尽きそうです。

 103手目。藤井二冠は桂を成り込んで王手をかけます。ここで広瀬八段は攻防ともに手段なしと見て投了しました。

藤井「(準決勝の)次局も一手一手しっかり考えて指したいと思います」

 いつも通りにあまりに強く、そして謙虚な藤井二冠でした。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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