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スキなし豊島将之竜王(30)電光石火の完勝で朝日杯2回戦進出 14時から藤井聡太二冠(18歳)と対戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月17日。愛知県・名古屋国際会議場において朝日杯本戦1回戦▲豊島将之竜王(30歳)-△飯島栄治七段(41歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 豊島竜王は愛知県一宮市出身。名古屋対局はホームということになるでしょう。

 飯島七段は2010年に七段に昇段して以来、公式戦で188勝を積み重ねてきました。昨年5月には羽生善治九段に勝って注目を集めています。

 飯島七段はあと2勝で規定の190勝に達し、八段昇段が決まります。それもあって、大変な意気込みでこの名古屋対局に臨んだようです。

 振り駒の結果、先手は豊島竜王。10時に対局が始まりました。

 後手番の飯島七段は横歩取りを誘いました。対して豊島竜王は佐々木勇気七段の名にちなんだ「勇気流」を採用。1月12日におこなわれたC級1組順位戦9回戦▲千葉幸生七段-△飯島七段の実戦例通りに進みます。

飯島「ちょっと序盤、意表をつかれた。この前、指した将棋だったんで・・・」

 終局後、飯島七段は何度か「意表をつかれました」と語っていました。

 朝日杯は持ち時間は各40分の早指しということもありますが、豊島竜王はほとんど時間を使いません。これは研究十二分であることをうかがわせます。

 31手目。豊島竜王は手を変えます。香損をする代償に、相手の動きに乗って桂を中段に跳ね出し、驚いたことに、これで豊島竜王がペースをつかんだようです。

 進んで、飯島陣はあっという間に突き崩され、形勢は豊島竜王優勢。さらには50手を超えるあたりでは、早くも勝勢へと推移していきました。飯島七段にとっては実力が発揮できないつらい展開だったでしょう。

 飯島七段は40分の持ち時間を使い切ってあとは一手60秒未満で指す一分将棋。対して豊島竜王は18分も残しています。

「いやあ・・・」

「うーん・・・」

 中継の映像からは、何度も飯島七段のため息が聞かれました。対して豊島竜王はいつもながらの冷静なまなざしで、盤上を見つめ続けます。

 70手目。飯島七段は一矢をむくいるべく、歩を打って豊島玉にいやみをつけます。14分を残している豊島竜王。慎重に6分を使い、相手玉を受けなしに追い込む桂を打ちました。飯島七段がと金を作りながらの王手をするのに対し、取らずに逃げてつかまりません。

 最後は豊島竜王がちょっと気づきづらい順で飯島玉を即詰みに討ち取り、11時32分、91手で完勝を収めました。

 豊島-飯島戦の通算成績は、これで豊島竜王の6連勝。飯島七段の八段昇段は本日は実現せず、後日に持ち越されることになりました。

 勝った豊島竜王は本日14時から、2回戦で藤井聡太二冠(18歳)と対戦します。豊島竜王と藤井二冠の過去の対戦成績は、豊島竜王の6連勝です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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