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剛腕無双・西山朋佳女流三冠(25)ハードパンチ炸裂で室岡克彦七段(61)を降し竜王戦6組勝ち進む

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月13日。東京・将棋会館において竜王戦6組3回戦▲西山朋佳女流三冠-△室岡克彦七段戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は15時11分に終局。結果は75手で西山女流三冠の勝ちとなりました。次戦では中村亮介六段-冨田誠也四段戦の勝者と対戦します。

快進撃続ける西山女流三冠

 西山女流三冠は前期6組では初戦から4連勝し、ベスト4に進出。女性初の5組昇級まであと一歩というところで惜しくも敗れました。

 今期竜王戦6組は里見香奈女流四冠、西山女流三冠、加藤桃子女流三段、伊藤沙恵女流三段の4人が出場。全員が初戦を突破するという快挙を達成しています。

 2戦目では3人が敗退。現在は西山女流三冠ただ一人が残っています。

 西山女流三冠は初戦で長岡裕也五段(35歳)に勝利。本日はベテランの室岡克彦七段(61歳)と対戦しました。

 振り飛車党の西山女流三冠。本局は四間飛車を採用しました。対して室岡七段も四間飛車で「相振り飛車」の構図となりました。

 玉形は西山女流三冠が美濃囲いなのに対して、室岡七段は金無双です。

 玉を7筋、金2枚を6筋、5筋の二段目に並べた金無双の弱点は「うさぎの耳」とも呼ばれる、6三の地点。西山女流三冠は銀を捨てるハードパンチから、その地点に迫ります。西山女流三冠は巧みに攻めをつなげ、あっという間に優位に立ちました。

 金無双のもう一つの弱点は玉の逃げ道をふさぐ壁銀です。室岡七段に態勢を立て直す余裕を与えず、西山女流三冠はパンチを打ち続けます。駒の損得も解消され、西山女流三冠が一方的に攻める形のまま勝勢を築きます。

 73手目。西山女流三冠は銀を打ち、相手の角の利きを止めながら角を捕獲します。これが最後の決め手となり、室岡七段は投了しました。

 持ち時間5時間のうち、西山女流三冠の消費時間はわずかに50分。快勝でまた一つトーナメントの山を駆け上っています。

初の女性棋士誕生なるか?

 西山女流三冠の現在の正式な立場は女流棋士ではなく、奨励会三段です。2期前の三段リーグでは惜しくも昇級を逃しています。

 棋士が参加する公式戦には女流タイトルホルダーとして出場しています。

 今期ヒューリック杯棋聖戦では二次予選決勝(ベスト32に相当)まで進出しました。

 1月11日には大阪・関西将棋会館まで遠征し、三段リーグで2連勝しています。現在の成績は7勝3敗。十分に昇級を狙える位置につけています。

 西山女流三冠が棋士四段に相当する実力の持ち主であることは、すでに公式戦での実績にも示されており、また多くの棋士、関係者も認めるところです。初の女性棋士誕生はなるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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