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攻める渡辺明王将、永瀬拓矢挑戦者が待ち構える天王山に歩を進める 王将戦第1局2日目開始

松本博文将棋ライター
(提供:アフロ)

 1月11日。静岡県掛川市、掛川城・二の丸茶室において第70期王将戦七番勝負第1局▲渡辺明王将(36歳)-△永瀬拓矢王座(28歳)戦、2日目の対局が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 戦型は角換わり腰掛銀の最新型。先手の渡辺王将が早めに桂を跳ね出して攻め、1日目から激しい展開となりました。76手目、後手の永瀬挑戦者は自陣に手厚く銀を埋めます。そこで渡辺王将が77手目を封じ、1日目の対局が終了しました。

 筆者手元のコンピュータ将棋ソフト「水匠2」は、中央の歩を突く手を最善手として示していました。

(記事中の画像作成:筆者)
(記事中の画像作成:筆者)

 明けて2日目朝。記録係の伊藤匠四段の棋譜読み上げによって、前日の指し手を並べます。76手目まで進められたあと、立会人の森内俊之九段が封じ手を開封しました。

 封じ手は5筋の歩を進める手。ソフトも示していた攻めの順です。両者ともに、どこまで事前の想定範囲なのでしょうか。

村山七段「渡辺さんらしい、すごく踏み込んでいった手という感じがします」

 将棋プレミアムで解説を担当している村山慈明七段はそう語っていました。

 永瀬挑戦者は銀取りをどう受けるか。歩を取るとすれば、右の銀、左の銀、桂の3通りがあります。永瀬挑戦者はここで考えています。

 永瀬王座は初参加の今期王将リーグで5勝1敗。同成績で並んだ豊島将之竜王とのプレーオフを制して挑戦権を獲得しています。

「一番充実している人が出てきた」

 戦前、渡辺王将はそう語っていました。永瀬王座の今年度成績は35勝17敗2持将棋(勝率0.673)です。

 一方の渡辺王将は今年度14勝10敗(勝率0.583)です。

 名人位を獲得し、A級順位戦(全9局)の対局がなくなったことなどもあってか、今年度は対局数少なめです。

 1月16日、渡辺王将、永瀬王座はともに名古屋でおこなわれる朝日杯に出場します。

 両者ともに1回戦を勝つと、こちらでもまた対戦することになります。

 朝日杯は左側の山に渡辺王将、永瀬王座、豊島竜王、藤井聡太二冠。4人のタイトルホルダー、いわゆる「4強」が集まったことになりました。

 10時過ぎ。永瀬王座の手が動きます。永瀬王座から見て左側の銀を、まっすぐ立つモーションで歩を取りました。1時間3分の長考でした。

 銀の利きがそれたのを見て、渡辺王将は6筋に銀を進めます。形勢は依然互角。ここからも目が離せない進行が続きそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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