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スキなし豊島将之竜王、羽生善治九段に快勝で竜王位初防衛まであと1勝 竜王戦七番勝負第4局

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月26日・27日。鹿児島県指宿市・指宿白水館において第33期竜王戦七番勝負第4局▲豊島将之竜王(30歳)-△羽生善治九段(50歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 26日9時に始まった対局は27日18時22分に終局。結果は113手で豊島竜王の勝ちとなりました。

 七番勝負はこれで豊島竜王3勝、羽生九段1勝。豊島竜王は初防衛まであと1勝と迫りました。

 第5局は12月5日・6日、神奈川県箱根町・ホテル花月園でおこなわれます。

豊島竜王、充実の勝利

 最終盤。豊島竜王は飛車の横利きに加えて、縦からの小駒の攻めで、羽生玉を受けなしに追い込みます。

 羽生九段は手段を尽くし、豊島玉を中段に引っ張り上げ、王手飛車をかけて、相手攻撃陣主力の飛車を抜きます。

 羽生九段は一手違いの形を作りました。豊島竜王が一手でも間違えれば、途端に逆転します。

 豊島竜王の残り時間は35分。そして最後の決め手を放つ前に、一度席を立ちます。これは勝ち急ぐことのない強者の定跡です。

 

 豊島竜王は最後まで間違えませんでした。10分を使って113手目、羽生玉の上部に角を打ちました。これで羽生玉に受けはなく、また豊島玉は詰まない。豊島竜王の一手勝ちです。

 残り15分の羽生九段。しばらく盤面を見つめていたあと、マスクに手をあてます。そして居住まいを正しました。

「あ、負けました」

 羽生九段は次の手を指さず、投了を告げて深く一礼。対局は終わりました。

豊島将之竜王「(3勝目をあげて防衛まであと1勝となったが)やっぱり重要な対局が続くので、そうですね、一局一局せいいっぱいやりたいと思っています。封じ手のところは、ちょっと手が広いのかなあ、と思っていました。本譜の(▲1三歩成と)と金を作ったときに、けっこうきわどい順が多いので、ちょっとよくわからなかったです。(飛車取りの△1五歩に▲同飛と)取ると、ちょっと飛車がねらわれそうな気がしたので(▲1七飛と)引く方がいいのかなと思ったんですけど。そのあと▲1七飛に対して△1六歩と突かれる手かもあるので、よくわかってなかったですけど。(自分の方が)指せるのかもしれませんけど、ちょっとどう応対していけばいいのか、わからない変化もあったので。と金作ってるので、指せるのかもしれないとは思ったんですけど、ちょっとわかりませんでした。(先にと金を作っているのは)大きいような気もしたんですけど、そうですね、こちらの玉の方が戦場に近いので、ちょっとまあ気持ちわるいというか。なんとも言えないですね。(▲6五角は評判がよかったが)ああ、そうですか。まあ、そうですね、△4七角を消しつつ(相手の3二)金取りなので、角、一回打つところかなあ、と思ったんですけど。(本譜の進行は)香得なので、もしかしたら指せるのかも、とは思いました。優勢かもしれないとは思いつつも、ちょっとよくわからないまま進めていたというか。▲1二飛とか▲4三歩とかが先手で入ったので、なんかよくしたかったんですけど、ちょっとでも手がわからなくて。本譜はあまり明解ではないような気がしたので。優勢というか、有利な気はしたんですけど。ちょっとそのあと、どう指していいのかが難しかったです。(改めて、初防衛まであと1勝と迫ったが)変わらず一局一局、せいいっぱい指せたらと思います」

羽生善治九段「(本局を振り返って)こちらから動いていったんですけど。うーん、少しずつ無理をしていったのかもしれないですね。なんか、ちょっとずつ苦しくなっていったような気がしました。(体調面で心配されていたが)対局そのものは、通常通りっていいますか、普段通りに指すことができたと思います。(1勝3敗と苦しくなったが)そうですね、また気持ちを新たに、次の一局に臨みたいと思います」

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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