藤井聡太二冠(18)二転三転の終盤を制して難敵・広瀬章人八段(33)を降し残留に望みをつなぐ

(記事中の画像作成:筆者)

 11月2日。東京・将棋会館において王将戦リーグ▲広瀬章人八段(33歳)-△藤井聡太二冠(18歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は20時5分に終局。結果は122手で藤井二冠の勝ちとなりました。

 リーグ成績は藤井二冠2勝3敗、広瀬八段1勝3敗となりました。藤井二冠はこれで暫定4位。リーグ残留に望みをつなぎました。

藤井二冠、広瀬八段に雪辱

 昨年のリーグ最終戦、挑戦者決定戦以来の対局となった両者。藤井二冠にとってはあともう少しというところで初挑戦を阻まれた相手です。しかし本局、藤井二冠は意識するところはなかったようです。相手が誰であれ、特に変わらぬ姿勢で対局に臨むのが、いつもの藤井流です。

 広瀬八段先手で、戦型は角換わり腰掛銀。広瀬八段は桂を跳ねて攻めていき、激しい戦いとなりました。現代将棋の最前線で、両者の研究もおそらく深いところ。午前中の段階で55手まで進みました。

 再開後は前例から離れた進行となります。中盤をあっという間に通り越し、一手のミスがたちまち勝敗に直結するような展開。両者ともに時間を使い、読み合いとなりました。

 先に攻め込まれて藤井玉はかなり危ない形に追い込まれます。ただし藤井二冠は駒得。しのげば優勢となります。

 73手目。広瀬八段は金を打って王手をかけます。藤井二冠はこの金を取って相手をするか、それとも逃げるか。判断が難しいところです。

「ヨルダン!」

 解説の豊川孝弘七段がそう叫んだ通り、藤井二冠は43分考え、玉を寄って逃げました。持ち時間4時間のうち、残り時間は広瀬50分、藤井49分。形勢、時間ともにほぼ互角の終盤戦です。

 82手目。藤井二冠は反撃に転じます。藤井二冠は前傾姿勢。これは「盤上没我」で集中している時に見られる仕草です。盤面を映す画面には、藤井二冠の髪も映ります。

 攻めたり受けたりの最終盤。

豊川「難解ホークス、キャンディーズ。わけわかんないです」

 本局。難解できわどいながらも、まずは藤井二冠が抜け出しました。

 しかし終盤力にかけては棋界屈指の広瀬八段。時間切迫の秒読みの中、逆に抜き返して、勝勢に立ちました。

 しかししかし。今度は藤井二冠が追い込んでいきます。102手目。藤井二冠は広瀬陣に角を打ち込みます。2分を使って持ち時間を使い切り、あとは60秒未満に指す「一分将棋」となりました。

 広瀬八段にとってみれば、読み切れれば勝てそうな局面。しかし藤井二冠は複雑さをキープして土俵を割りません。

 104手目。藤井二冠は自陣一段目に歩を打ちました。なんとそんな勝負手があるとは・・・。指された方は目がくらみそうです。

 残り7分の広瀬八段。5分を削って決断をします。広瀬八段は相手の銀を取り、その銀を自陣に銀を打って受けました。

 そして再び逆転――。最後に抜き返したのは、藤井二冠でした。

広瀬「最後▲8九銀は・・・」

 局後に広瀬八段はその手を敗着として挙げていましたが、代わる手も難しいところでした。

 自玉にはまだ詰みのない藤井二冠。一手の余裕をいかして、広瀬玉を追い込んでいきます。

藤井「△6八金から△7八桂成として(△6六角成と)角が使える形になったので・・・」

 取られそうだった角。そして自陣で遊んでいる飛車までも役立つ変化が生じ、まさに「勝ち将棋鬼のごとし」という結末に。

豊川「これは木村一基が100人来ても受かんないですよ」

 広瀬玉は受けの達人が何人集まっても受けがない形です。対して藤井玉に詰みはなし。広瀬八段はそこで無駄な王手はかけず、潔く投了を告げました。

 藤井二冠はこれで2勝3敗となり、残留に望みをつなぎました。

 ただし現状はまだ順位の差で、1勝3敗の広瀬八段は「自力」で残留できる可能性があります。

 前期挑戦の広瀬八段は順位1位。藤井二冠は順位3位。仮に両者が今期リーグ、このあと全勝して3勝3敗の同成績で並んだ場合には、順位上位の広瀬八段が優先的に残留の権利を得ます。

 隣りの部屋でおこなわれていた▲佐藤天彦九段-△豊島将之竜王戦は19時36分、104手で豊島竜王の勝ちとなりました。この結果、豊島竜王4勝0敗、佐藤九段1勝5敗に。挑戦権争いは豊島竜王が暫定トップに立ちました。