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永瀬前叡王「タイトル戦の対局数を増やすことができたのはとてもいい経験になった」終局後インタビュー全文

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 叡王戦七番勝負第9局終局直後、両対局者にはインタビューがおこなわれました。

豊島将之新叡王「(戦型は角換わり腰掛銀で)まあ、一応予定していた作戦だったんですけど。そうですね、ちょっと(△6五歩と)仕掛けられたあと、じっと△7四歩と打たれて、手が難しかったです。▲5五銀としたあと、けっこう後手からの対応がいろいろあるんで、そんなにうまくいってるかどうかはわらかなかった・・・というかまあ、むしろあんまりうまくいってないような気がしてたんですが。まあ、そうですね、▲2四歩と突くところで▲7七歩とか打つ手も考えたんですけど、△3一玉と引かれてまた手がわからなかったので。まあ、そういう感じで苦労するよりかは、攻めていった方がいいかなと思いました。(終盤)△3七角成に▲6三角と打って、まあ、なんか自分の読みの中ではうまくいってるような気がしました。まあでもまだちょっとわからないようなところもあるのかもしれません。駒得なので正確に指していければ行けそうかなとは思ったんですけど。まあでもまだちょっと、はっきり読み切れてたわけではないです」

永瀬拓矢前叡王「(序盤は)少し失敗してるのかなという感じがしてたんですけど。そうですね、△7四歩のところで確かに難しい気もしたので。本譜の▲5五銀の指し方に対して、うーん、互角に近い順があるかという感じですね。ただちょっと、うーん、△3一玉▲2三歩の交換が妥当なのかどうかはちょっと判断が難しい気もしたので、わからなかったです。(△6四銀の鬼手を放ったが、そのあとで歩頭に桂を捨てる)▲2五桂が見えていなかったので組み立てを間違えたですけど・・・。△6四銀に代えて△4六銀の変化もなんかわるいような気がしたので。まあでもそちらで指すしかなかった。本譜は▲2五桂がぴったりになってしまったので、そういう組み立ては冴えてなかったような気がします。(終盤は)▲2五桂以降は相当わるい気がしたんですけど・・・。そうですね、▲2五桂とされてからは均衡が崩れてしまっているか、あるいはまあ、元から崩れていたかわからないんですけど。そうですね、そこからは厳しいのかなとは思いました」

豊島新叡王「(叡王位獲得について)名人戦は内容もよくなかったですし、失冠してしまったので・・・。そうですね、今年度はあまりいい結果が出てなかったので、ひとつ結果が出せてよかったと思います。最初の方の数局はかなり不本意な展開というか、将棋になってしまいましたけど、最後の2局ぐらいはわりと自分らしく指せたかなと。最後の将棋(第9局)とか前の将棋(第8局)とか。(竜王と叡王の二冠になったが)あまり内容のよくない将棋が続いているので、もうちょっとなんとかうまく指せるようにしていかないと、だんだん厳しくなってくるのかなと。(七番勝負は持将棋2局、千日手1局が生じたが)持将棋とか千日手・・・少し予想していたところもありますけど、こういう展開になるとは思っていなかったので。持将棋の将棋とかは練習とかでもあんまり指すことがないので、いい経験にはなったと思います」

永瀬前叡王「(七番勝負は)先後でかなり勝率の差が出てしまったので。そうですね、できればその差をなんとか埋めないといけないのかな、とは思います。(七番勝負で印象深い一局は)そうですね・・・(考えて)そうですね、ちょっとパッと思いつかないんですけど、本局(第9局)ですかね。(第9局まで局数を重ねたことは)タイトル戦出る回数がまだまだ少ないので、タイトル戦の対局数を増やすことができたのはとてもいい経験になったので。それを、よい材料を糧(かて)にできればよいなとは思います」

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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