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豊島将之挑戦者リードを奪ったか? 永瀬拓矢叡王は鬼手を放って勝負と迫る 叡王戦七番勝負第9局

松本博文将棋ライター
2014年、電王戦に出場した豊島将之七段(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

 9月21日。第5期叡王戦七番勝負第9局▲豊島将之竜王(30歳)-△永瀬拓矢叡王(28歳)戦がおこなわれています。

 永瀬叡王は54分考え、歩を合わせて桂を前進させます。対して豊島挑戦者が64手目を考え、手番のまま18時、夕食休憩に入りました。

 将棋会館の普段の対局であれば、夕食休憩は18時0分から40分まで。叡王戦七番勝負ではそれが10分短くなっています。

 18時30分、対局再開。豊島挑戦者は跳ねてきた桂取りに歩を打ちます。手堅く受け止めて、永瀬叡王はどう攻めをつなげるのかというところ。流れは次第に豊島ペースとなってきたようです。

 朝の対局開始から15分後、和服からスーツに着替えた永瀬叡王。ここまでは七番勝負を通じて変わらないところですが、本局では半袖ではなく長袖シャツ姿になっています。暑さ寒さも彼岸まで。永瀬叡王のシャツの袖も長くなって、季節はいよいよ本格的に秋を迎えたようです。

 両対局者にはいくつかの共通点があります。その一つは両者ともにコンピュータ将棋と対戦する「電王戦」に出場したことです。そして勝負としては人類が苦しい状況だった中、両者ともに勝利という大きな結果を残しています。あの熱狂のイベントを、つい昨日のことのように覚えているという方も多いことでしょう。

 永瀬叡王は座布団からひざが大きくはみ出すように座っています。そして豊島挑戦者が6手前に捨ててきた銀をようやくにして取ります。

 豊島挑戦者は永瀬叡王の銀が移動したのを見て、永瀬陣三段目に歩を成り、と金を作ります。これが金取り。このと金を取られると飛金両取りの痛打が生じて、はっきり豊島挑戦者よしです。

 68手目。永瀬叡王は間髪をいれず、目の覚めるような渾身の勝負手を放ちました。相手のと金を取らず、あえてそのと金に当たるところに銀を引く鬼手(きしゅ)です。

 ニコニコ生放送では斎藤慎太郎八段と山口恵梨子女流二段が解説を務めています。

山口「手順がすさまじすぎて、なにが起こってるのかよくわからないんですけど」

斎藤「おしゃれな手ですね・・・。必死に考えた手をおしゃれとか言うと怒られると思うんですけど」

山口「いや、びっくりしました」

 金でも銀でも好きな方を取ってくれという鬼手を放たれた豊島挑戦者。ここでじっくりと考えます。もしどちらかの駒を取れば王手桂取りの返し技があります。

 34分考えた豊島挑戦者。じっと歩を打って、斜めのラインをふさぎます。その手は読んでいた永瀬叡王。再び間髪をいれずに豊島陣一段目に角を打ち込みます。

 時刻は20時を過ぎました。形勢はわずかに豊島挑戦者が有利のようです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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