挑戦者・久保利明九段(45)王座戦第2局で永瀬拓矢王座(28)の粘り許さず快勝 五番勝負は1勝1敗に
9月9日。京都市・ウェスティン都ホテル京都において第68期王座戦五番勝負第2局▲久保利明九段(45歳)-△永瀬拓矢王座(28歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。
9時に始まった対局は20時26分に終局。結果は127手で挑戦者・久保九段の勝ちとなりました。
五番勝負はこれで両者ともに1勝1敗。第3局は9月24日、宮城県仙台市・仙台ロイヤルパークホテルでおこなわれます。
さばきのアーティスト、鮮やかに1勝
先手番の久保九段は5筋位取り中飛車の作戦でした。
久保「ちょっと序盤、工夫しながらやってみたんですけど・・・。うまくいったかどうかはわからないんですけど、それなりに攻める展開にはなったので、まずまずと思いながらやってました」
永瀬王座が棒銀で攻めてくるのに対して、久保九段は角を成り込んで馬を作ります。
永瀬「馬を作られる展開だったんですけど、それがどれぐらい大きいかという将棋だったのかなと思います。こちらが何か代償を得れないといけないかなと思ったんですけど、なかなか。うーん、結果的に形がバラバラになってしまったので。馬を作らせたのも、もしかしたら問題があったのかもしれないです」
図は▲5一馬(飛車取り)に8四飛を△8二飛と逃げたところ。ここで▲6一馬△8四飛▲5一馬△8二飛という順が繰り返されれば、千日手となります。久保九段は▲4五歩で打開しました。これは好判断だったようです。
永瀬「(棒銀で仕掛けたあたりは)難しいような気がしたんですけど・・・。ただ、そうですね、やっぱり(自分の)3三の角と(相手の)馬の差が徐々に出てきてしまったので。出てくると少しきついのかな、という感じがしました」
形勢は次第に久保九段よしとなります。
久保「少しいい局面もあったと思うんですけど、ずっとそれ以上差がつかないというか」
久保「こっちも端詰められたりとかで・・・。いいような気はしてたんですけど、ずっと最後の方までよくわからなかったですね」
久保九段は局後の感想でそう述べていました。ただし客観的に見れば、途中からは久保九段が優位に立っていたようです。
不利に立たされた永瀬王座。手段を尽くすものの、久保九段の指し回しは攻防ともに誤りがなく、次第に敗色が明らかになっていきます。
永瀬「急に差がついてしまったような気がしたんで、差がつく前になんとかしたかったかなとは思います」
早く投げてしまえば楽になるところ。しかし永瀬王座は絶望的な局面を前にして、じっと時間を使い続けます。これは永瀬王座の不屈の精神力を表しているようにも思われます。ただし盤上ではなく中空を眺めるような時間が多く、手を読んでいる雰囲気はあまりありません。
ずっと半袖シャツ姿だった永瀬王座は110手目を考えている間に、ジャケットを着ます。そして持ち時間5時間を使い切って、あとは一手60秒未満で指す一分将棋となりました。
対して10分を残している久保九段。永瀬陣の駒を着実に取っていく自然な寄せで、ゴールへと近づいていきます。
118手目。永瀬王座は一時しのぎの受けで銀を打ちます。これもすぐに香で取られてしまうと、やはり受けなしであることにかわりはありません。第1局では久保九段は最後、やはり受けにはなっていなかったものの、歩頭に銀を打ったことを思い起こさせます。
127手目。久保九段は香を走って王手をかけます。これで永瀬玉は詰みです。
「50秒、1、2」
記録係の声にうながされるようにして永瀬王座は頭を下げます。
「負けました」
久保九段も一礼を返して、マスクをつけました。
これで五番勝負は永瀬王座、久保九段ともに1勝1敗となりました。
久保「1勝できたということで『まずまずのスタートなのかな』という感じですかね」
両者の通算対戦成績はこれで久保九段2勝、永瀬王座5勝となりました。