Yahoo!ニュース

藤井聡太二冠(18)谷川浩司九段(58)ともに長考相次ぐ難解な中盤戦 B級2組4回戦はこれから夜戦に

松本博文将棋ライター
(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

 9月9日。大阪・関西将棋会館においてB級2組4回戦▲谷川浩司九段(58歳)-△藤井聡太二冠(18歳)戦がおこなわれています。

 藤井二冠の今年度成績は20勝3敗(勝率0.870)です。

画像

 相変わらずおそるべき成績と言うよりありません。藤井二冠の対局姿を見られるのは王位戦第4局以来のことになります。

 本局は谷川九段先手で、戦型は角換わり腰掛銀となりました。終戦直後に流行して、しばらくは指されていなかったこの戦型において、谷川九段は「中興の祖」と言うべき存在。平成の間、この戦型で多くの名局が残されました。

 最近はコンピュータ将棋の進化によって、人間が指す序中盤の戦術もまた進化しています。角換わり腰掛銀もまた、その影響を大きく受けています。

 41手目。谷川九段は藤井二冠の飛車が4筋に回ったのを見て、7筋に置かれている守りの銀を前に出ていきます。中段に銀を2枚並べて、積極的に仕掛けを見せる姿勢。ここで昼食休憩に入りました。

 再開後、藤井二冠は飛を元の8筋に戻します。これには谷川九段も出た銀を引くのが最善です。藤井二冠は4筋に飛車を4手動いて局面は元に戻ります。

 角換わりはその戦法の性質上、常に千日手の筋がちらつきます。局面は膠着状態。午後の間はずっと、千日手の可能性がありました。

 50手目。藤井二冠は1時間46分を使って、じっと金を動かして待ちます。もし谷川九段が望めば、そのまま千日手となりそうです。

 51手目。今度は谷川九段が長考します。そして1時間26分考え、四段目に2枚並んでいた銀のうち、左側の銀を中央五段目に進め、藤井二冠の腰掛銀にぶつけました。まさに「谷川前進流」といった姿勢です。これで千日手の可能性は小さくなったようです。

 藤井二冠は再び長考。そして18時、夕食休憩に入りました。

 盤上ではほとんど弱点の見つからない藤井二冠。盤外ではキノコが苦手なことは次第に知られてきました。

 一方で谷川九段はエビとカニが苦手です。こちらもまた、昔から将棋ファンにはよく知られています。

谷川浩司はエビとカニが苦手である。お母さんに聞くと、子供のころ海水浴場で食べた焼そばで腹痛になり、それにエビが入っていたので拒否するようになったそうだ。ところが、対局場では縁起物のエビ料理がよく出る。谷川には別のメニューを用意するようにしている。

出典:福本和生『産経新聞』1992年10月8日朝刊

 本局でも昼食、夕食ともに、両者の苦手な食材は避けられているようです。

 東京6局、大阪6局おこなわれているB級2組4回戦。本格的な戦いはようやくこれから、というところが多いようです。

画像
将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

松本博文の最近の記事