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9月21日開催の叡王戦七番勝負第9局、先手は豊島将之挑戦者 後手の永瀬拓矢叡王は持ち時間6時間を選択

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 9月6日におこなわれた叡王戦七番勝負第8局は挑戦者の豊島将之竜王(30歳)が永瀬拓矢叡王(28歳)を降しました。

豊島「2勝3敗という状況だったので、なんとか最終局、第9局にいけるようにと思っていたので。フルセットになったのでまあ、ほっとしたというか。一応、盛り上げるという意味では、役目を果たせたかな、というところでしょうか。(本日第8局は)けっこう早めに仕掛ける展開になって、まあ、あの形になったら仕掛けてみようと思っていたんですけど。けっこう後手がまとめづらいのかな、という展開が続いて、最後は一手勝ちを読み切ることができたなかと思います。(研究通りだった?)けっこういろんな形を指されるので、どうなるかわかりませんでしたけど。ああいう形になったら仕掛けて、そのあとも深く研究できていたわけではないんですけど。まあ、たまたまうまくいったというか。そういう感じかなと思います」

 両者3勝3敗2持将棋1千日手となり、七番勝負は第9局がおこなわれることが決まりました。

 そして事前の取り決め、第8局終了後、第9局の先後を決めるための振り駒がおこなわれました。

先崎「それではただいまより第9局の振り駒をおこないます。振り歩先は永瀬叡王です。はい、それではよろしくお願いします」

 立会人の先崎学九段がマイクを手にそう言ったあと、記録係の齊藤優希三段は駒袋の中から歩を5枚取り出し、前に進み出ました。

齊藤「永瀬先生の振り歩先です」

 齊藤三段が両手の中で歩をよく振ったあと、白布の上にまきます。

齊藤「『と金』が5枚です」

 白布の上には、歩の裏の「と」が5枚出ていました。

先崎「はい、えー、『歩』は0枚でした。『と金』が5枚出ましたので、豊島竜王の先手番ですね」

 通常の振り駒であれば、ここで終わりです。しかし今期叡王戦第9局の詳細を決めるに当たっては、この次が重要です。

先崎「それでは後手となりました永瀬叡王に第9局の持ち時間を、3時間、5時間、6時間の中から決定していただければと思います。はい、よろしくお願いします」

 マイクを渡された永瀬叡王。少しの間、遠くを見つめるようにして考えます。どの持ち時間にするのかは、事前に決めていなかったようにも見えました。そして決断します。

永瀬「では6時間でお願いします」

 決まったことを先崎九段が読み上げます。

先崎「振り駒の結果、以上を踏まえまして、第9局の方は先手が豊島竜王。後手が永瀬叡王。ということで、持ち時間は6時間?」

 先崎九段は永瀬叡王の方を向いて確認します。

永瀬「はい」

先崎「と、決めさせていただきました。以上です。ありがとうございました」

 将棋史上初の七番勝負第9局は9月21日、東京・将棋会館でおこなわれます。もしそこから何度千日手、持将棋になろうとも、後日指し直しはありません。すぐに指し直し局がおこなわれ続け、完全に決着がつくまで戦われることになります。

豊島「(第9局は)先手になったら自分は(持ち時間を)選べないので、決まった時間でという・・・。『なんとなく6時間かなあ』という気はしていたので。このシリーズの流れでとことんやっていこうという感じになっているので、第9局も粘り強くいけたらと思います。(もし自分が選ぶとしたら長い時間にしていた?)でも勝たないと第9局にならないですし。勝ったとして振り駒で先手が出ることもあるんで、そこまであんまりちゃんとは考えれてなかったですけど。(第9局はどうなりそう?)展開はちょっとわからないですけど、これだけたくさん戦ってきて最後なので、悔いがないように、そういう将棋が指せればと思います。(ファンに向けて)次でいよいよ決着がつくので、悔いが残らない将棋を指せるようにしたいと思っています。最後まで結末を見届けていただけたらと思います。ありがとうございました」

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将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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