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百折不撓の前王位・木村一基九段(47)初の王将リーグ入り達成 難敵・三浦弘行九段(46)を降す

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 8月24日。東京・将棋会館において王将戦二次予選決勝▲三浦弘行九段(46歳)-△木村一基九段(47歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は17時15分に終局。結果は102手で木村九段の勝ちとなりました。

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 木村九段は前王位。防衛戦となった王位戦七番勝負では、若き藤井聡太棋聖(18歳)の挑戦に苦杯を喫しました。

 木村九段はすぐに立ち直っての白星です。

 各棋戦で常に上位を争っている木村九段。意外なことに、王将戦では初の挑戦者決定リーグ入りとなりました。

木村九段、47歳での快挙達成

 前期王将戦七番勝負は広瀬章人竜王(現八段)が挑戦権を獲得しました。

 七番勝負はフルセットの末に、渡辺明王将が広瀬八段の挑戦をしりぞけ、防衛を果たしました。

 今期王将戦は二次予選が大詰めを迎えているところです。参加者はわずかに7人だけというスーパーリーグ。そして予選を勝ち上がって新たに入れるのは、わずかに3人だけという狭き門です。

 三浦九段は前期リーグ陥落のリスタート。一方の木村九段は王位のタイトルを保持していたため、シードで二次予選から登場となりました。

 三浦九段と木村九段は直近では今年6月、竜王戦の1組5位決定戦で対戦。木村九段が勝っています。

 過去の対戦成績は三浦九段11勝、木村九段8勝となっていました。

 前局(竜王戦)に引き続いて、先手番は三浦九段。そして戦型も同じく角換わりとなりました。

 三浦九段が前例通り先攻したのに対して42手目。木村九段は手を変えます。そして両者妥協することなく、局面は一気に激しい変化へと突入しました。

 三浦九段は飛車を渡す代償に銀を取ってと金を作ります。対して木村九段は「王手と金取り」で、自陣にできたと金を抜きます。

 王位戦第4局では封じ手で藤井挑戦者が飛車を切り、銀と刺し違える順が話題となりました。本局もまた同様にバランスが取れているようです。

 木村九段の飛車は縦横にはたらき、三浦陣に成りこんで龍となります。一方で三浦九段は自陣に金2枚、銀4枚を並べて防戦。さらにはもう1枚木村陣の金を取って、金銀7枚を確保しました。

 勝敗不明で迎えた一手を争う終盤戦。抜け出したのは木村九段でした。木村玉はきわどい形に追い込まれますが、その瞬間に三浦玉には三十手近い詰みが生じています。木村九段が詰みを読み切って王手をかけ始めたところで、三浦九段は潔く投了しました。

 木村九段はこれで初の王将リーグ入り。王位戦七番勝負敗退直後「一から出直す」と語っていた木村九段。早くも巻き返しの態勢に入りました。

 王将戦リーグ入りは加藤一二三六段(当時)の16歳というおそるべき最年少記録があります(これは藤井二冠も更新できませんでした)。一方で木村九段の47歳での初のリーグ入りもまた、快挙と言えるでしょう。

 総当りのリーグ戦ではもちろん、藤井聡太王位・棋聖と木村九段との対戦もあります。

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将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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