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黒いスポーツ用マスクと薄緑の羽織が好対照 王位戦第4局▲木村一基王位-△藤井聡太挑戦者戦始まる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 8月19日。福岡県福岡市・大濠公園能楽堂において第61期王位戦▲木村一基王位(47歳)-△藤井聡太棋聖(18歳)戦、1日目の対局が始まりました。

 8時43分。まず淡い薄緑色の涼やかな羽織姿で登場した藤井挑戦者。これは師匠・杉本昌隆八段がプレゼントしたものだそうです。

 8時52分。木村王位登場。小豆色の落ち着いた色合の羽織です。目をひくのは、黒いスポーツ用マスク。これは渡辺明新名人の「新手」で、名人戦七番勝負の序盤で採用して大きく話題となりました。

 木村王位はその渡辺流を踏襲したのかどうか。

 2008年、渡辺竜王は最強の挑戦者である羽生善治名人を相手に、将棋史上初の3連敗から4連勝という離れ業を演じています。両者の肩書はいずれも当時。「渡辺竜王、羽生名人」という響きは、多くの将棋ファンにとってはなじみ深いものと思われます。

 この秋にはもし羽生九段が竜王挑戦、奪取となれば、「渡辺名人、羽生竜王」となります。もしそうなれば時代が巻き戻りながら、ほんの少しだけ「入れ替わっている」感じもします。

 渡辺新手にならったのかどうかはともかく、木村王位は普段からジョギングで体力づくりをしていることはよく知られています。

 本局で使われる駒の書体は水無瀬(みなせ)。木地は「虎斑」(とらふ)という模様が入ったものです。

 虎斑の駒は見た目が大変美しい。ただしその模様が気になるとして、実際の対局では敬遠される場合もあります。本局では木村王位が選んで藤井挑戦者が同意し、その駒となりました。

 対局場は大濠公園能楽堂。昨年は第3局がおこなわれました。当時、挑戦者の立場でそこまで2連敗だった木村王位は1勝を返し、反撃ののろしをあげています。最終的には4勝3敗で王位獲得となりました。

 最近ではこのあたりで、イノシシを追い掛けての大捕物が話題となりました。

 立会人を務めるのは地元福岡市出身の中田功八段(53歳)です。中田八段の門下からは佐藤天彦九段(32歳)という名人位を3期獲得する俊英が出ました。佐藤九段もまた福岡市出身です。

 また副立会人を務める豊川孝弘七段(53歳)は現在、福岡市在住。地元での将棋普及に努めています。

 9時。

「それでは定刻になりましたので、対局を始めてください」

 中田八段が時間になったことを告げます。両対局者は「お願いします」と一礼しました。

 木村王位、しばし目を閉じて瞑想。そして1分を使ったあと、カメラのシャッター音が鳴り響く中、飛車先の歩を伸ばしました。

 藤井挑戦者はいつもの通り、グラスを手にして冷たいお茶を口にします。そしてまたいつもの通り、2手目は飛車の前の歩を手にして、一つ先に進めました。

 戦型は相掛かりとなりました。これは木村王位先手番の第2局と同じ戦型です。

 進んで藤井棋聖、木村王位の順に飛車先の歩を交換します。

 そして23手目。木村王位は五段目に飛車を引きました。これが木村王位の工夫です。

 時刻は10時を過ぎました。現在は24手目、藤井挑戦者が7筋の歩を突いた局面まで進んでいます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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