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豊島将之名人(30)66手目を封じて名人戦第6局1日目終了 相矢倉で難解な中盤続く

松本博文将棋ライター
(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

 8月14日。大阪・関西将棋会館において第78期名人戦七番勝負第6局▲渡辺明二冠(36歳)-△豊島将之名人(30歳)戦、1日目の対局がおこなわれました。

 関西は豊島名人のホーム。渡辺挑戦者は東京からの遠征となります。

 渡辺挑戦者先手で、戦型は相矢倉。豊島名人は矢倉の銀を四段目に出て、急戦の構えを見せます。

 2筋と5筋で歩の交換がおこなわれ、序盤から比較的早い進行となりました。

 49手目、渡辺挑戦者はじっと玉側9筋の端歩を突きます。ここで豊島名人の手番で昼食休憩に入りました。

 両対局者の昼食は関西将棋会館1階のレストラン、イレブンから。このあたり、名人戦であっても、将棋会館での対局であることを感じさせます。

 一昨日、昨日は東京・将棋会館で竜王戦本戦準決勝の2局がおこなわれました。その結果、挑戦者決定戦三番勝負は羽生善治九段と丸山九段が対戦することになりました。

 名人戦が終われば、秋には竜王の立場で、豊島竜王は七番勝負を戦うことになります。

 再開前。豊島名人は席に着き、盤を見つめて考え始めます。

 13時30分。渡辺挑戦者がちょうど席に着くところで記録係が「時間になりました」と告げました。

 昼食休憩をはさんで、消費時間は1時間13分。攻める手なども考えられそうなところ、豊島名人はじっと端9筋の歩を突き返しました。

 今度は渡辺挑戦者が長考に沈みます。そして51分。逆サイドの1筋の歩をつっかけました。手持ちの2枚の歩をいかして、端攻めを仕掛けていきます。

 55手目を考慮中、渡辺挑戦者はグラスに注がれた冷たいお茶を飲みます。それをお盆に戻す際にお茶がこぼれたのか、たくさんのティッシュを出して拭いていました。そして最後にティッシュで鼻をかみます。

 55手目。渡辺挑戦者は6筋から突っかけていきます。

 対して豊島名人は8筋桂頭に手裏剣の歩を飛ばしてきました。まさに盤面全体を使っての攻防です。渡辺挑戦者はいったんは桂を逃げたあと、65手目にその歩を払うことになります。

 1日目から難解な中盤の攻防が続いて、形勢は均衡が取れたままほぼ互角。そこで18時30分を迎えました。立会人の谷川浩司九段が声をかけます。

「6時半になりました。豊島名人が次の手を封じてください」

 ほんの一呼吸をおいたあと、豊島名人が盤側を向きます。

「封じます」

 豊島名人は谷川九段から用紙や封筒を受け取り、別室に向かいます。渡辺挑戦者は白い和服の上に淡い青緑の羽織を着ました。

 御上段の間に戻ってきた豊島名人は2通の封筒を渡辺挑戦者に渡します。渡辺挑戦者が封筒にサイン。豊島名人が谷川九段に封筒を預けて、1日目が終わり、指し掛けとなりました。

 明日2日目は午前9時から始まります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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