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豪腕・西山朋佳女流三冠(25)熱戦を制して片上大輔七段(38)を降し棋聖戦一次予選決勝進出

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 7月30日。東京・将棋会館において棋聖戦一次予選準決勝▲西山朋佳女流三冠(25歳)-△片上大輔七段(38歳)戦がおこなわれました。持ち時間は各1時間。10時に始まった対局は12時42分に終局し、結果は123手で西山女流三冠の勝ちとなりました。

 西山女流三冠は本日14時からおこなわれる一次予選決勝で北島忠雄七段(54歳)と対戦します。

西山女流三冠、女性初の一次予選通過まであと1勝

 西山女流三冠は泉正樹八段、渡辺和史四段を連破して準決勝に進出しました。

 片上七段は1回戦はシード。2回戦では谷合廣紀四段に勝ちました。片上七段、谷合四段はともに東京大学卒の棋士としても知られています。

 棋聖戦一次予選は持ち時間各1時間。本局の勝者は本日ダブルヘッダーで、次の決勝戦まで戦うことになります。

 西山女流三冠先手で、戦型は得意の中飛車となりました。片上七段は三段目に銀を並べ中央に手厚い構えに組みます。

 西山女流三冠が中央から動いたのに応じる形で片上七段も応戦。駒がぶつかって本格的な戦いが始まりました。

 片上七段が飛車を成り込んだのに対して、西山女流三冠は角を成り込みながら玉近くの香を取ります。先に持ち時間を使い切って60秒未満で指す一分将棋となった西山女流三冠は、自陣から離れていた金を相手の龍(成飛車)に当てながら巧みに引きつけ、ペースをにぎります。

 両者一分将棋の終盤戦。片上七段の攻めに西山女流三冠が対応を誤ったか、形勢は片上七段優勢となったようです。

 しかし西山女流三冠は底歩を打つなどして粘り強く応戦。崩れずに勝機を待ちます。やがて端からの攻めが間に合う形となり、西山女流三冠勝勢となりました。

 最後は左右はさみ撃ちの形から片上玉を詰ませ、西山女流三冠の勝利となりました。

 西山女流三冠はこれで14時からの一次予選決勝に進出。反対側の山を勝ち上がった北島忠雄七段と対戦することになりました。

 棋聖戦では、女性が一次予選を抜けた例は過去にはありません。昨年は里見香奈女流五冠(現女流四冠)が決勝まで進みましたが、大橋貴洸四段(現六段)に敗れています。

 各棋戦で男性棋士を相手に好成績を挙げ続けている西山女流三冠。ここで新たな偉業達成となるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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