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藤井聡太棋聖(18)B級2組3回戦も快勝で順位戦通算成績は32勝1敗!(終局後インタビュー全文)

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 7月29日。東京・将棋会館において第79期順位戦B級2組3回戦▲藤井聡太棋聖(18歳)-△鈴木大介九段(46歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は19時25分に終局。結果は103手で藤井棋聖の勝ちとなりました。

 藤井棋聖は3勝0敗。鈴木九段は2勝1敗となりました。

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 また藤井棋聖の順位戦通算成績は32勝1敗(勝率0.970)となりました。

 藤井棋聖は4回戦で谷川浩司九段(58歳)と対戦します。

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藤井棋聖、中盤のリードを広げて快勝

 対局再開のずいぶん前から、両者は盤の前に座っていました。鈴木九段は白いマスクをつけていて、藤井棋聖はマスクなし。再開の時が近づいて、両者は居ずまいを正します。藤井棋聖は崩していた足をぴょこんと浮かせるようにして、正座にすわり直しました。

「時間になりました」

 18時40分。記録係の広森三段が声を発して、対局が再開されました。

 72手目。鈴木九段はすぐに守りの銀で攻めの香を取りました。馬(成角)をさらに自陣に引きつけて粘ろうという姿勢です。

 藤井棋聖は手にした銀を馬取りに打ち、手厚く上部から圧をかけていきます。

 79手目。藤井棋聖は鈴木陣一段目に角を打ち込んで、寄せを目指します。残り時間は藤井1時間6分、鈴木3時間34分。形勢ははっきり、藤井棋聖勝勢。時間も比較的余裕ありといえそうです。

 83手目。藤井棋聖は自分の龍(成飛車)と相手の飛車とを交換します。相手に飛車を手持ちとさせるので、これはもう決めに行くということです。さらには自分の角を相手の金と刺し違え、きっぱりと寄せに行きます。

 藤井棋聖は鈴木玉を着実に追いつめていきます。一方で藤井玉は穴熊の堅陣に収まったまま。

 藤井棋聖が席を立ったあと、盤の前に一人残された鈴木九段は頭をかき、中空を見上げます。

 90手目。鈴木九段は12分考えたあと、香の犠打をはなちます。もしこの犠打を藤井棋聖が攻めの金で取ってくれると、少し攻めの速度が遅くなります。

 藤井棋聖は2分考え、その犠打を取らず、鈴木九段の守りの要の金をはがします。さらには清算して馬まではがし、鈴木玉の周りから守備駒が消えました。藤井棋聖は鈴木玉の上部に銀を進め、これでほぼ受けなしです。

 鈴木九段は藤井陣に飛車を打って、形を作りました。

 藤井棋聖は鈴木玉を詰ませにいきます。鈴木九段はわかりやすいところまで進め、103手目、角成の王手を見て投了を告げました。

終局後インタビュー

藤井棋聖「(鈴木九段の四間飛車に対して)穴熊にするのは予定だったんですけど、そのあとこちらの仕掛けがどうか、成否はきわどいところだったかなというふうには思いました。(39手目▲2四歩の仕掛けは昼食休憩をはさんで56分の長考で)本譜の仕掛けがあるので(直前の)△4三銀は上がってきづらいのかなというふうに思っていたんですが、ただ、上がられてみると仕掛けていけるのかとかちょっと、判断が難しいのかなというふうに思いました。(▲6五歩と進めて以降は)手が広いのでわからなかったです。(よくなったと思ったのは?)そうですね。(夕食休憩前の71手目)▲8六金と上がって手厚い形になったのかなと思いました。(これでB級2組順位戦は3連勝で)序盤としてはいい星取りでここまで来れていると思うので、昇級を目指してがんばりたいと思います」

鈴木九段「△4三銀上がるところ、△6三金かわからなかったんですけれども、△4三銀通ればかなり大きい手なんで。ちょっと本譜の仕掛け、途中でちょっと軽視した筋があって。(47手目)▲2三歩と合わせる手なんですけども。ちょっとそれ軽視しててわるくなって。そっからはやっぱりチャンスが来なかったかなと思ってるんですけれども。もう少し粘れたかもしれないんですけど。そうですね、なんか途中から面白くない将棋にしちゃったんで。藤井さんとせっかく当たるんで楽しみにしてたんですけど、ちょっと内容がわるすぎて残念ですけど。そうですね、△4三銀で仕掛けられると思ってなかったのが。あそこで鋭く仕掛けられて、踏み込まれて、手になってるっていう感覚がなかったですね、自分の方に。はい。(▲2四歩に△同歩ではなく△同角はなかったか?)△同歩に▲6五歩で△4四銀立つのがはじめ、本線だったんですけど、本譜でもいけるかなと。角交換した方がやっぱり穴熊を薄められるんで。実戦的に角交換になったんですけど、その駒も含めて全部、それから前へ前へ来られちゃったんで。(△2四)同角でとか、△4四銀立つとか、少しゆるやかな流れにした方が本譜よりよかったと思いますね。(藤井棋聖と実際に戦って思ったのは)もちろん強いのはわかってるんで、できたらゆっくり指して、自分の力が発揮できる展開にしたいなと思ったんですけれども。本譜、一気に仕掛けられて、そこで踏みとどめられなかったのが、ちょっと残念なんです。それも含めて実力かな、とは思いますが」

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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