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居飛車穴熊から仕掛けた藤井聡太棋聖、振り飛車のスペシャリスト鈴木大介九段を相手に機敏にリードを奪う

松本博文将棋ライター
写真撮影:悟訓

 7月29日。東京・将棋会館において第79期順位戦B級2組3回戦▲藤井聡太棋聖(18歳)-△鈴木大介九段(46歳)戦がおこなわれています。

 12時40分。昼食休憩が終わり、午後の戦いが始まりました。スーツの上着を脱ぎ、半袖シャツ姿になっていた藤井棋聖は、ネクタイをはずします。その姿を見てみると、やはり現役高校生3年生という感じもします。

 39手目。藤井棋聖は飛車先の歩を突いて仕掛けました。以下は既出の手筋を組み合わせ、自然に攻めていきます。なにか目新しい、奇抜な指し方をしているようには見えません。しかし藤井棋聖がこの形のスペシャリストである鈴木九段を相手に、うまく戦機をつかんでリードを奪ったようにも見えます。

 50手目。鈴木九段は藤井陣に角を打ち込んで反撃します。藤井棋聖がと金を作り、飛車を成り込む一方、鈴木九段は居飛車穴熊の急所である桂を取ります。

 60手目、鈴木九段は底歩を打って龍(成飛車)の利きを止め、粘る姿勢を見せます。現状は藤井棋聖リードで間違いないようです。ただし持ち時間6時間のうち、残り時間は藤井2時間25分、鈴木4時間13分で大差がついています。

 ABEMAの中継の情報によれば、本局で藤井棋聖が使っている扇子は、いつものように師匠・杉本昌隆八段のものではなく、将棋日本シリーズ・JTプロ公式戦(JT杯)出場棋士12人による署名扇子だそうです。

 藤井棋聖は今期でJT杯参加2回目となります。1回戦は菅井竜也八段を相手に勝利を収めました。

 藤井棋聖にとっては、JT杯の一局が17歳最後の勝利でした。もし本局に勝てば、18歳最初の勝利となります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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