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豊島将之名人(30)突き放すか? 渡辺明挑戦者(36)追いつくか? 名人戦七番勝負第4局開始

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 7月27日・28日。東京都文京区・ホテル椿山荘東京において第78期名人戦七番勝負第4局▲渡辺明二冠(36歳)-△豊島将之名人(30歳)戦がおこなわれます。

 七番勝負は渡辺挑戦者1勝のあと、豊島名人が2勝をあげました。

 第3局から第4局までは、ほぼ1か月ほど空きました。その間、7月14日におこなわれた王座戦準決勝でも両者は対戦し、渡辺三冠(当時)が勝っています。

 これで両者の通算対戦成績は渡辺18勝、豊島13勝となりました。

 渡辺挑戦者の今期成績は5勝5敗。敗戦はすべてタイトル戦で、豊島名人に2敗、藤井新棋聖に3敗です。

 棋聖戦五番勝負では1勝3敗で藤井聡太挑戦者に棋聖位を明け渡しています。

 渡辺挑戦者のタイトル保持数は棋王・王将で、二冠に後退となりました。しかしこのあと名人を取り、さらには王座まで獲得すれば、自身初の四冠となります。

 豊島名人は挑戦者として臨んでいる叡王戦第2局で永瀬拓矢叡王を相手に持将棋となりました。そのあとで王座戦準決勝で渡辺二冠に敗れています。そして叡王戦第3局でもなんと持将棋。

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 将棋のタイトル戦番勝負、一つのシリーズで2回の持将棋が成立したのは史上初です。

 豊島名人は名人戦第2局、第3局の勝利も含んで○○○○○○と公式戦6連勝していました。直近では持●●持●●と4連敗。今期の通算成績は6勝5敗です。

 本局がおこなわれるのは、都内の椿山荘。近年では名人戦開幕局の対局場として定番となりました。本来であれば今年もそうなる予定だったのですが、コロナ禍により延期。改めて第4局の対局場となりました。

 例年であれば多数のファンを集めておこなわれる大盤解説会も、今年はありません。

 朝8時50分の時点ですでに両者とも席に着き、駒まで並べ終えていました。本局で使われる駒は「名人駒」と呼ばれる将棋連盟の秘蔵品。戦前に活躍した駒師・奥野一香(1899-1939)の手によるものです。書体は「宗歩好」。双玉なのが特徴で、いつもであれば「王将」を持つ豊島名人も「玉将」を据えています。

「それでは定刻となりましたので、渡辺二冠の先手番でお願いします」

 午前9時。立会人の中村修九段が合図をして、豊島名人、渡辺挑戦者は一礼。対局が始まりました。

 渡辺二冠は襟元を直し、しばし瞑想。最近の渡辺二冠は髪を短く刈り込んでいますが、本局ではひときわ短いように感じられます。目を開けて、一瞬中空を見上げたあと、盤上に手を伸ばします。シャッター音が響く中、指された初手は角道を開ける歩突きでした。

 対して豊島名人は飛車先の歩を伸ばしました。矢倉模様の立ち上がりです。

 そして本局は相矢倉の進行となりました。今期名人戦では初めて指される戦型です。矢倉脇システムが最近のトレンドで、本局もそう進展しています

 39手目。渡辺挑戦者は1筋の歩を突き越します。これで先後同型ではなくなりました。ここまで多く指されている形と比べ、少しの違いではありますが、この先は大きく変わってくるかもしれません。

 ここまでの消費時間は両者ともに22分。10時15分時点では豊島名人が次の手を考えています。

 1日目は18時の時点で手番の側が「封じ手」をおこないます。通例では2日目夜に決着となります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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