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渡辺明棋聖(36)攻めきるか? 藤井聡太七段(17)きわどくしのぐか? 棋聖戦第3局、早くも終盤戦

松本博文将棋ライター
コンピュータ将棋ソフトの解析では勝敗不明の終盤戦に(記事中の画像作成:筆者)

 7月9日。東京都千代田区・都市センターホテルにおいて第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局▲藤井聡太七段(17歳)-△渡辺明棋聖(36歳)戦がおこなわれています。

 ネット上のトレンドワードには「角換わり」という将棋の戦法が挙がっていました。

 その通り、本局の戦型は角換わりです。現代将棋の最先端。先手の藤井七段が先攻し、60手まで前例をたどりました。その後も両者の研究が合致したか、異例のハイペースで進んでいきます。

 74手目。反撃のターンで渡辺棋聖は藤井玉の頭に歩をたたいて、王手をかけました。これはどう応じるか。歩を取るのか。取るとすれば金か玉か。逃げるのはどうか。はためには、悩ましいところのように思われます。

 藤井七段は20分ほど考えて、玉で取りました。時間が切迫しているというわけではありません。中盤で惜しみなく時間を使うスタイルの藤井七段が比較的早く指したということは、ある程度の見通しが立って、自信を持っての指し手なのでしょう。

 76手目。渡辺棋聖が藤井玉の真上の歩に自分の攻めの歩を合わせて、昼食休憩に入りました。

 先日の棋聖戦第2局では、藤井七段は海老天重を注文していました。筆者が一度お店を訪れた時には藤井効果で売り切れ。もう一度行った際に、ようやく注文することができました。

 コンピュータ将棋ソフト「水匠2」で解析したところでは、50億手以上(37手先)まで読んだ時点で、ほぼ互角の形勢のようです。

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 77手目。藤井七段は当たりになっている金を逃げました。対して渡辺棋聖は自陣に藤井陣をにらむ角を打ちます。渡辺棋聖が藤井玉の上下から攻める形となり、局面はもう終盤と言っていい段階に入りました。

 藤井玉には王手がかかり、受けの手を指さなければ詰んでしまう「詰めろ」もかかって、藤井玉周辺は最終盤の様相を呈しています。

 手堅く安全に指そうと思えばもっと他の順がありそうなところ、藤井七段はギリギリのきわどい受けで応じます。

 90手目。渡辺棋聖は藤井陣左隅に飛車を打ち、端三段目の藤井玉に王手をかけます。持ち時間4時間のうち、残りは藤井2時間4分。渡辺2時間33分。両者ともに半分以上の時間を残しての最終盤となりました。

 もうそろそろ15時になろうかというところで、藤井七段は考え続けています。藤井七段はどのような受けの手を指すのか。現時点では、勝敗はまったく不明のようです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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