若武者・藤井聡太七段(17)羽織袴で凛々しく颯爽登場 棋聖戦第2局で王者・渡辺明棋聖(36)に挑む

(記事中の画像作成:筆者)

 6月28日。東京・将棋会館において第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局▲渡辺明棋聖(36歳)-△藤井聡太七段(17歳)戦が始まりました。

 棋譜は公式ページをご覧ください。

 本局、立会人を務めるのは屋敷伸之九段(48歳)です。今回、藤井七段に記録を破られるまで、タイトル挑戦の史上最年少記録を保持していました。

 一方で、屋敷九段は依然、タイトル獲得の史上最年少記録は依然保持しています。

 本局は東京・将棋会館4階の特別対局室でおこなわれます。愛知県瀬戸市在住の藤井七段は東奔西走の日々を送っています。

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 直近では3日前、東京でB級2組1回戦、佐々木勇気七段戦をたたかい、勝っています。

 前回の棋聖戦第1局では、藤井七段はスーツ姿でした。

 8時43分、対局室に藤井七段が姿を見せます。今回第2局では、満を持しての和服姿でした。

「かっこいい!」

 ABEMAで解説聞き手を務める加藤桃子女流三段が、そう声を挙げていました。確かに凛々しくかっこいい。

 和服を着ている対局者は、やはり少しは暑いのでしょう。しかし観戦者の目には、若武者・藤井七段の颯爽とした姿は涼やかに映ります。

 Twitter上を見ていると、ファンの皆さんからは「涙が出てきた」というような声が多く見られます。小さな頃からよく知っている子が、晴れ舞台に臨む姿を見るのに似た感覚でしょうか。

 1989年、19歳の羽生善治六段(当時)は竜王戦七番勝負に登場した際、やはり第1局はスーツ、第2局以降は和服でした。最終局はまたスーツで、4勝3敗1持将棋でシリーズを制し、初タイトルを獲得しています。

 藤井七段が濃紺の着物の上に着ている羽織は黒に近い色。少し透けて見える紗(しゃ)の薄物で夏仕様です。

 藤井七段のタイトル戦での和服姿は初めてです。公式戦では2019年8月、和服が義務付けられている将棋日本シリーズJTプロ公式戦(三浦弘行九段戦)において、既に同じ服を着た経験があります。

 この先も大舞台に和服姿で臨むことが増えるであろう藤井七段。この季節にはまた、この黒い紗の羽織を目にすることになるのでしょう。

 8時49分。渡辺棋聖が特別対局室に入り、上座に着きます。こちらはいつも通りの、王者の風格です。

 渡辺棋聖は一昨日まで名人戦七番勝負第3局をたたかっていました。

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 渡辺棋聖は中1日でのタイトル戦連戦。今回はコロナ禍という特殊な事情もありますが、ハードスケジュールがトップ棋士の宿命であることは、昔から今に至るまで変わりません。

 棋聖戦第1局は藤井七段の先手。戦型は相矢倉で、藤井七段が名局を制しました。

 第2局は先後が入れ替わります。

「それでは定刻になりましたので、渡辺棋聖の先手番でお願いします」

 午前9時。屋敷九段が声を発して、両者一礼。注目の対局が始まりました。

 渡辺棋聖は初手、角道を開けました。

 藤井七段はグラスから冷たいお茶を飲み、その後で飛車先の歩を伸ばしました。お茶を飲むのも2手目も、いつもと変わりません。

 先後は替わったものの、戦型は同じ相矢倉となりました。

「矢倉を制する者は棋界を制す」

 とは昭和の昔によく言われた言葉です。盤面広くすべて駒を使っての攻防となる矢倉は、もっとも実力が表れやすい戦型であるとも見なされてきました。時代のトップ同士が、先後どちらを持っても矢倉で戦い続けたというシリーズは多くあります。

 渡辺棋聖は早めに攻めの桂を跳ね、守りの銀を中央四段目に出ます。そして中段に桂を跳ね出し、攻めの銀もまた四段目に進めます。

 矢倉戦法も時代によって大きく変わります。互いに堅く囲い合うのが主流という時代もありました。一方で現在のトレンドは急戦調に移行しています。

 35手目。藤井七段は一度下に引いた角を元に戻します。計算上は2手を損することになるわけですから、研究なしではすぐに指せない手でしょう。

 持ち時間4時間のうち、ここまでの消費時間は互いに35分。どちらも事前の準備十二分というところなのでしょう。

 11時過ぎ。渡辺棋聖は37手目、飛車先の歩を突いて交換に出ました。

 棋聖戦は朝9時に対局が開始され、12時から13時が昼食休憩。夕食休憩はなく、通例では夕方から夜に終局となります。

 前回第1局。渡辺棋聖による厳しい王手の追及をかわし続け、藤井七段がきわどく逃げ切って勝利を収めたのは19時44分のことでした。