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藤井聡太七段(17)逆転で有利、史上最年少タイトル挑戦が見えてきた? 棋聖戦挑決、いよいよ佳境に

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 第91期ヒューリック杯棋聖戦・挑戦者決定戦▲永瀬拓矢二冠(27歳)-△藤井聡太七段(17歳)戦は18時半を過ぎ、佳境を迎えています。

 永瀬二冠先手で戦型は相掛かり。中盤を通り越してあっという間に終盤に入ったかのような、激しい展開となりました。

 藤井七段は永瀬二冠の攻めを受け続けた後、反撃に転じました。

 54手目、藤井七段が攻めに打った銀はさすがという評判でした。それまで、どちらかといえば藤井七段が押されているのではないかと思われていたところ。藤井七段が放った一手で、盤上の形勢は勝敗不明のようです。

 永瀬二冠はここで時間を使って読みふけります。

 藤井七段は残り16分と残り時間が少なくなっていました。対して永瀬二冠は残り1時間34分と比較的余裕があります。勝負にからいタイプの永瀬二冠であれば、ここで時間攻めも考えられそうなところです。

 しかし永瀬二冠はずっと考え続けました。永瀬二冠をもってしても、ここはすぐには指せない難解な局面だったようです。

 55手目。1時間8分を使った永瀬二冠は玉を左下に引きました。これは世界中から「ひえー」と聞こえそうな手です。この早逃げを予想していた人は、世界にほとんどいなかったのではないでしょうか。

 藤井七段が永瀬陣三段目に飛車を打ち込んだのに対して、永瀬二冠は金を1枚目に打ち付けます。永瀬ワールドとしか言いようがない、驚くような受け方です。これはさすがの藤井聡太七段も読んではなかったのではないでしょうか。

 ソフトが示す評価値は、次第に藤井七段の側に傾いてきました。

 とはいえ、まだどちらが勝つかはわかりません。将棋ファンが固唾を呑んで見守る中、息詰まる終盤戦が続いています。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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