Yahoo!ニュース

西山朋佳女王(24)防衛、3連覇達成 マイナビ女子オープン五番勝負をフルセットの激闘で制す

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月3日。東京・将棋会館において第13期マイナビ女子オープン五番勝負第5局▲西山朋佳女王(24歳)-△加藤桃子女流三段(25歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 10時に始まった対局は15時42分に終局。結果は127手で西山女王の勝ちとなりました。

 西山女王は3勝2敗で五番勝負を制して防衛。3連覇を達成しました。

 西山女王の前に4連覇していた加藤挑戦者は、今期での復位はなりませんでした。

西山女王、充実の防衛

 ここまでの4局は、互いに先手番を「キープ」しての2勝2敗。

 最終第5局は改めて振り駒がおこなわれ、西山女王が先手となりました。

 西山女王は第2局、第4局に続いて、5筋位取り中飛車を採用します。

 対して加藤挑戦者は玉のそばに金銀4枚を集結させ、玉は盤上隅にもぐる穴熊の作戦です。

 加藤陣が堅さ重視なのに対して、西山陣はバランス重視で上部に手厚く位を張っています。

 盤上中央で歩がぶつかりあう小規模な戦闘が続く長い中盤戦。やがて中段の駒の数が多い西山女王が押さえ込みに成功して、優位に立ちました。

 西山女王はラグビーのスクラムのように前進を重ね、ついに加藤陣にと金を作ることに成功しました。

 じっとしていてはそのまま押し切られてしまう加藤挑戦者は、玉頭方面から手を作ろうとしますが、西山女王側の銀冠の堅陣は耐久力があります。

 西山女王はと金で穴熊の外壁を構成している銀をはがし、着実に寄せていきます。西山女王はセオリー通り上部から押さえていき、最後は加藤玉を詰ませて終局となりました。

 西山女王は充実の3連覇。女流タイトル三冠を堅持しました。

 五番勝負が始まった4月から現在にかけてはコロナ禍で、誰もがベストの状態で対局に臨むのは難しい状況だったのかもしれません。加藤女流三段は実に惜しい敗退でした。

 マイナビ女子オープン五番勝負が終わった後は6月5日、延期されていた女流王位戦五番勝負が開幕します。里見香奈女流王位(28歳)に挑むのは加藤女流三段。休む間もない日程です。加藤挑戦者がベストの状態で勝負に臨めれば、好勝負となることでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

松本博文の最近の記事