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進撃止まらぬ将棋界の鬼軍曹・永瀬拓矢二冠(27)ヒューリック杯棋聖戦・挑戦者決定戦に進出

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月2日。東京・将棋会館において第91期ヒューリック杯棋聖戦決勝トーナメント(本戦)準決勝▲永瀬拓矢二冠(27歳)-△山崎隆之八段(39歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は19時5分に終局。結果は105手で永瀬二冠の勝ちとなりました。

 永瀬二冠はあさって6月4日におこなわれる挑戦者決定戦で▲藤井聡太七段(17歳)-△佐藤天彦九段(32歳)戦の勝者と対戦します。

永瀬二冠、充実の勝利

 本局がおこなわれたのは東京・将棋会館4階、高雄の間。すぐ隣りの棋峰の間には、同じ棋聖戦準決勝▲藤井七段-△佐藤天彦九段戦が配置されていました。

 永瀬二冠は初手に飛車先の歩を突きます。対して山崎八段は角の横に金を上がります。不定形を得意とする山崎八段らしい立ち上がりです。

 永瀬二冠が飛車先の2筋の歩を伸ばし、さらに交換をするのに対して、山崎八段は6筋の歩を取らせる作戦に出ます。さらには進んで3筋の歩も取らせ、あわせて2歩損。駒の損得だけを見れば永瀬二冠が得をしていますが、永瀬二冠が飛車を動き回っている分、山崎八段の駒が前に進んでバランスは取れています。

 山崎八段は金銀4枚で雁木の美しい形に組み挙げました。対して永瀬二冠は玉を右辺に移動させて美濃囲いに収めます。両者の飛車角が中段の前線に躍り出て、本格的な戦いが始まりました。

 飛車交換から互いに飛車を相手陣に打ち込んで龍(成り飛車)を作り、終盤の寄せ合いが始まります。

 低くかまえた永瀬陣が堅さをキープしているのに対し、山崎陣の雁木が乱れた分だけ、形勢は永瀬二冠に傾いたようです。

 山崎八段は少しわるい局面からの逆転術が超一級です。対して永瀬二冠は龍を切って踏み込み、一足早く寄せに出て決めにいきます。

 最後は永瀬二冠が山崎玉の十数手にも及ぶ即詰みを読み切り、終局となりました。

 永瀬二冠はこれで棋聖戦挑戦者決定戦に進出。

 隣りでおこなわれている準決勝のもう一局はまだ終わっていませんが、藤井七段が優勢に進めています。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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