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元名人・佐藤天彦九段(32)と神童・藤井聡太七段(17)6月2日、棋聖戦本戦準決勝で対戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月2日(火)。東京・将棋会館において第91期ヒューリック杯棋聖戦・決勝トーナメント(本戦)準決勝、佐藤天彦九段(32歳)-藤井聡太七段(17歳)戦がおこなわれます。

 勝者は2日後の4日(木)におこなわれる挑戦者決定戦に進出。

 さらにそこを勝つと翌週の8日(月)には五番勝負第1局を戦うことになります。近年まれに見るタイトなスケジュールの中、渡辺明棋聖(36歳)への挑戦権を獲得するのは、果たして誰でしょうか。

トップクラスの貫禄か、それとも大型新人の勢いか

 佐藤九段は名人3期などの実績を誇る、現代将棋界トップクラスの一人です。

 棋聖戦では2011年と15年に挑戦者決定戦に進出しながらも敗退。五番勝負進出の経験はまだありません。

 今期はここまで船江恒平六段、郷田真隆九段に勝ってベスト4に進出してきました。

 藤井七段は一次予選3連勝、二次予選3連勝で、初の本戦進出となりました。本戦1回戦で斎藤慎太郎八段に勝利。2回戦では菅井竜也八段に千日手指し直しの死闘を制しています。

 藤井七段は今期棋聖戦でここまで8連勝。破竹の勢いでベスト4まで駆け上がってきました。

 藤井七段は愛知県瀬戸市在住。コロナ禍によりしばらくの間、長距離移動をともなう棋士の対局は延期されていたため、藤井七段の手合もつきませんでした。

 そしてこのたび、緊急事態宣言が全国的に解除されたことを受け、まずは棋聖戦の日程が発表されています。

 藤井七段にとっては史上最年少でのタイトル挑戦がかかっています。ただし藤井七段のこれまでのコメントを見れば、それらの記録についてはほとんど意識していないものと思われます。

 佐藤天彦九段と藤井七段は2018年1月、朝日杯で対戦しています。当時の肩書は佐藤名人-藤井四段。対局場は藤井四段のホームである愛知県名古屋市でした。

 藤井四段が先手で、戦型は横歩取り。中盤で藤井七段は金銀を三段目、四段目と押し出し、佐藤名人の飛車を圧迫して形勢をリード。最後は佐藤玉を上下左右から包み込んで寄せ切り、勝利を収めました。

 新人四段が時の名人に勝つという、文字通りの「金星」。藤井四段はこの後五段に昇段し、準決勝で羽生善治竜王、決勝で広瀬章人八段に勝って優勝を果たしています。

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 史上最年少での全棋士参加棋戦優勝。さらに史上最年少での六段昇段。2017年度朝日杯は、さらなる藤井フィーバーを巻き起こしました。

 さて、この時決勝で敗れた広瀬八段は後に竜王となります。

 2019年王将戦リーグは最終戦の広瀬竜王-藤井七段戦が挑戦者決定戦となりました。最終盤では藤井七段が勝勢。しかし広瀬竜王が追い込んで最後は大逆転。藤井七段はタイトル挑戦を阻まれています。

 朝日杯では史上最年少での全棋士参加棋戦優勝を許し、藤井七段に名を成さしめた広瀬八段と佐藤天彦九段。その両者が後に相次いで、史上最年少でのタイトル挑戦を止める。そんなストーリーも、十分に考えられるかもしれません。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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