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現役タイトル保持者、元A級の大豪、勢いさかんな若手が居並ぶB級1組順位戦、6月11日開幕

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 将棋界の歳時記では、6月は順位戦が始まる時節です。6月2日にはまず、A級が開幕します。

 6月11日にはB級1組順位戦も始まります。

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 開幕カードは以下の通りです。

△木村 一基王位-▲阿久津主税八段

▲久保 利明九段-△松尾  歩八段

△行方 尚史九段-▲深浦 康市九段

△永瀬 拓矢二冠-▲屋敷 伸之九段

▲千田 翔太七段-△丸山 忠久九段

△郷田 真隆九段-▲近藤 誠也七段

(名前左=順位上位)

※山崎 隆之八段=空き番

 B級1組の定員は13人。今期はそのうち8人が元A級です。四十代後半の実績十分の棋士が並ぶさまは壮観です。

 前期A級では激闘の末に、久保利明九段(44歳)、木村一基王位(47歳)が無念の降級となりました。

 A級から陥落して、すぐにA級復帰という例は過去にたくさんあります。最近では渡辺明三冠(36歳)がB級1組全勝でA級カムバック。さらにはA級でも全勝という快記録を達成しました。

 誰が昇級してもおかしくない顔ぶれの中、叡王・王座を併せ持つ永瀬拓矢二冠(27歳)は押しも押されもせぬ現役タイトルホルダー。昇級候補の本命格であり、A級入りを待望しているファンも多いことでしょう。

 また前年度、藤井聡太七段(17歳)を降して朝日杯優勝の千田翔太七段(26歳)も有力な昇級候補の一人です。

 今期からB級1組は降級枠が2から3に増えました。昇級争いとともに、残留争いもまた熾烈さを増しそうです。

 B級1組13期目の山崎隆之八段(39歳)は、前期ギリギリのところで残留が決まりました。

 山崎八段の逆転術は一級品です。先日放映された早指しのAbemaTVトーナメントでは、近藤誠也七段(23歳)を相手に、すさまじい大逆転劇を演じていました。

「一度は山崎八段のA級を見たい」

 そう願うファンも多いはずです。山崎八段は今期で順位戦参加23期目。今期昇級し、来期24期目でA級に参加すると、屋敷伸之九段(48歳)の記録を抜いて、A級初昇級までの最長期間記録となります。(本稿最後の表参照)

 山崎八段と同様に松尾歩八段(40歳)も、いつA級に昇級してもおかしくはない実力者の一人です。

 四十代でのA級初昇級は田丸昇九段(当時41歳)、木村義徳九段(当時44歳)という例があります。

 NHK将棋講座「阿久津主税の楽しく勝とうB級グルメ戦法」で講師を務めている阿久津主税八段(37歳)は、自身が指している将棋はプロ間でも評価の高い本格派です。今期終了時点ではこのクラス唯一の三十代。3度目のA級昇級なるでしょうか。

 元名人でもある丸山忠久九段(49歳)はB級2組からの復帰。前期順位戦では全クラスを通じて昇級一番乗りを果たしました。

 丸山九段は通算勝数でもB級1組では1位です。

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 長く上位で活躍し続ける丸山九段、郷田真隆九段(49歳)、深浦康市九段(48歳)は、いずれ通算1000勝も視野に入ってくることでしょう。

 深浦九段は昨年度NHK杯で初優勝を達成しています。

 近藤誠也七段(23歳)は近年まれに見るスピードでB級1組まで駆け上がってきました。

 もし今期でA級昇級を決めると4クラスを5期での通過。これは羽生善治九段(49歳)や森内俊之九段(49歳)などの7期を上回り、谷川浩司九段らと並んで歴代3位タイの記録となります。

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将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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