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久保利明九段(44)通算12回目の竜王戦本戦進出決定 1組3位決定戦で稲葉陽八段(31)に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 5月8日。大阪・関西将棋会館において竜王戦1組3位決定戦▲久保利明九段(44歳)-△稲葉陽八段(31歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は21時55分に終局。結果は117手で久保九段の勝ちとなりました。

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 久保九段はこれで1組3位。通算12回目の決勝トーナメント(本戦)進出を決めました。

振り飛車のお手本のような指し回し

 振り駒の結果、先手は久保九段に決まりました。稲葉八段が角道を開ける一手を保留して駒組を進めるのに対して、久保九段は向かい飛車に振りました。

 玉形は、久保九段が美濃囲い。稲葉八段は左美濃。久保九段は手損をいとわない繊細な手順で金銀3枚を守りにつけます。そこから両者、銀冠の好形へと組み替えました。

 両者ともに互いに仕掛けづらく、駒組が頂点に近づいたところで、久保九段は互いの玉に近い本陣近く、4筋から歩をぶつけて動きます。本局はこの筋が主戦場となりました。

 対して稲葉八段は飛車先の8筋の歩を突き捨て、盤面全体で戦いが起こります。

 久保九段の飛車は最初に8筋に据えられた後、5筋、6筋、4筋と動き、再び8筋に戻ってきました。飛車を自陣でどれだけ上手く使えるのかが、振り飛車を指す上での大きなポイントなのかもしれません。

 稲葉八段が4筋の位を押さえようとするのに対して、久保九段はその動きに乗じて、逆に4筋を制圧します。このあたりで形勢は久保九段に傾いたようです。

 久保九段は銀桂交換の駒得を果たした後、玉とは遠い7二の地点に銀を打ち込みます。この銀が角との交換になり、駒割は角桂交換に拡大しました。

 最後、久保九段は飛車交換から相手陣に飛車を打ち込んで、完璧なフィニッシュ。駒割、玉形、いずれも大差で、稲葉八段の投了となりました。

 1組3位の久保九段は優勝の羽生善治九段、2位の佐藤和俊七段に続いて、本戦進出3番乗りとなりました。

 久保九段は本戦で2組優勝者と対戦します。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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