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あと2勝でタイトル挑戦の藤井聡太七段(17)新型コロナの影響で対局延期 最年少記録更新はどうなる?

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月8日夜。日本将棋連盟は「緊急事態宣言を受けての対応」を発表しました。

 本日4月8日、羽生善治九段は東京から大阪に移動して対局をおこなっていました。

 こうした遠征をともなう11日(土)以後の対局は、原則的に延期されることになりました。

 「長距離移動」に関しては、地方在住で対局のたびに東西の将棋会館に遠征する棋士、女流棋士は毎局該当するようです。

 現在、愛知県瀬戸市に住む藤井聡太七段も地方在住の棋士の一人です。

 藤井七段は10日(金)、いつも通り新幹線で大阪・関西将棋会館にまでおもむいて、王位戦リーグの3連勝対決、菅井竜也八段戦を戦います。

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 こちらは王位挑戦権の行方を大きく左右する大きな一番です。

 藤井七段が現在、もっともタイトル挑戦権に近づいているのは、棋聖戦です。挑戦権を争うトーナメントでは、ベスト4にまで進出しています。

 そうした中、17日に予定されていた藤井七段の準決勝の対局が延期されることが発表されました。

 棋聖戦は昨年、4月26日に挑戦者決定戦におこなわれています。もしかしたら今後、準決勝、挑決と、例年のスケジュールから大きく遅れることになるのかもしれません。

 昨年の五番勝負第1局は6月4日でした。

 もし藤井七段が棋聖挑戦権を獲得し、五番勝負開幕が昨年と同じ6月4日頃とするならば、藤井七段は史上最年少でのタイトル挑戦記録をギリギリで更新できます。

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 先日は名人戦七番勝負の延期が発表されました。

 5月になって状況が好転し、通常通り対局がおこなわれるようになるかどうかについてはまだ、誰にもわかりません。

 藤井七段がいつタイトル挑戦を果たしてもおかしくはない実力の持ち主であることは、既に以前から明らかです。しかし盤外の事情によりもしかしたら、タイトル挑戦、獲得に関するいくつかの記録は、達成が難しくなるのかもしれません。

 もっとも、藤井七段の最年少タイトル挑戦記録に関しては、藤井七段自身はほとんど意識をしている様子がありません。藤井七段が志しているのは「記録」の達成ではなく「棋力」の向上で、記録をことさらに注目し、取り上げてきたのは外野です。

 もし仮にいくつかの最年少記録が達成されないとしても――。藤井七段がこの先、身体の健康を保って成し遂げるであろう多くの記録を考えれば、さほど重要なことではないでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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